説明
記事ピックアップ「高分子材料の圧延加工」
高分子材料はその結晶構造、分子配向性、結晶化度などの高次構造によって特性が変化することが知られている。例えば、高度に分子配向した試料では、力学特性が向上する。
このうちの圧延加工は、上下対になったロールを回転させ、そのロール間に試料を通過させて試料を延伸する加工方法であり、高度な配向を付与できるため、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリオキシメチレン(POM)などの高分子材料単体だけでなく複合材料などさまざまな高分子材料に適用されている。中山らはPPやPOMなどの高分子材料に対し圧延加工をおこない、物性や高次構造の変化を調査している。
例えば、POMを圧延すると、分子鎖が圧延方向に配向することを広角X線回折(WAXD)により明らかにし、引張特性についても圧延方向の引張強さおよび弾性率が向上することを報告している。
Bahadurは、POMを圧延した後に、0°、45°および90°方向に対して引張試験をおこなうことで、90°方向の引張強さは加工前とほぼ同じであるが、圧延方向(0°)における引張強さは向上し、力学的異方性が生じることを報告している。
また、Dhingraらは、PPを圧延し、0°、45°および90°方向に対して引張試験をおこなっており、分子鎖が圧延方向に配向することにより圧延方向における引張強さが最も強くなることを示唆している。
このように、高分子材料の強度はその高次構造の影響を受ける。そのため、材料の高次構造を把握することは、その特性を評価するうえで大変重要である。著者らはこれまで、長く圧延加工の研究に取り組んできた。
本報では、主にこれまであまり検討されてこなかった塑性変形メカニズムに関する検討事例や今後の展望などを述べる。
秋田県立大学 教授
邱 建輝
(地独)鳥取県産業技術センター 研究員
村田拓哉
秋田県立大学 特任助教
張 国宏
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