植物医科学

3,960 (税込)

上巻刊行から13年、「植物医科学」の全編完結版が全頁フルカラーで刊行される。230点余りの図表、約500枚の病徴写真を駆使した教科書である。

在庫あり

判型 A5判
第2版
ページ数 544
発行日 2022/03/31
ISBN-13 978-4-8425-0584-8 C3061
ISBN-10 4-8425-0584-2
JAN 1923061036001
図書館: カーリル
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説明

上巻刊行から13年、「植物医科学」の全編完結版が全頁フルカラーで刊行される。230点余りの図表、約500枚の病徴写真を駆使した教科書である。

12の章からなり、前半は植物医科学の「知の構造化」編、後半は植物医科学の「知の社会実装」編で構成されている。旧上巻の内容は最新のものに改訂し前半部分に配置し、当初下巻として構想されていた後半部分では、植物医科学の「知」のマネジメントにより環境・生態系に優しい植物生産をいかに効率的に行うかを論じている。とくに植物医師とその活動拠点となる植物病院の展開について、先進事例や海外での取り組み等を交え幅広く論じている。

特筆すべきは食の安全と環境保全に対してそれらが果たすべき役割が明確に述べられる一方で、その活動を持続し成長させるための植物医科ビジネスの可能性がさまざまな視点やアイデアとともに提示されている点である。同時に、学問とビジネスの融合において重要な要件となる法令・政策についても、多くのページを割いて農業環境の改善や生物多様性、脱炭素社会に向けた法令・政策と植物医科学の関係が分析されている。これらは類書にない特徴である。植物病診断の達人になるためのヒントも満載で、写真入りの詳説は初学者にもわかりやすい。植物医師をめざす者、現役の植物医師、農業関連法人や農業生産に携わる者にとって、上巻同様バイブルでありつづけるであろう。

「植物医科学」は農学のみならず、あらゆる学問分野に横串を刺し、植物を「診る」という視点から生命に寄り添う境界融合臨床科学である。

「植物病」は微生物病・害虫病・生理病・雑草害などの総称で、微生物病・害虫病・雑草害だけで、生産可能量の1/3(約200兆円相当)の食糧を毎年失っており、微生物病による損失だけで飢餓人口8億人分の食料に相当する。この現実に対して、私たちはどう切りこんでいけばいいのか。本書は、植物・微生物・昆虫の相互作用を分析するミクロな視点から、それらの織りなす自然現象を俯瞰的に眺める視点、さらには人間・社会・ビジネスの視点、そして地球環境のマクロな視点にいたるまで、多層なレンズで難題に焦点を当て解決の糸口を提示する。

植物・微生物・昆虫に興味のある人、一歩引いて自然現象を眺めたい人、現場に役立つ知と技を身につけたい人、新たなビジネス創出に興味ある人にとって、価値ある知と技が得られる。また、植物病について統合的に記述しており、植物保護に対する俯瞰的な視点を養うことができる、これまでにない研修教材としての活用も期待される。

目次

はじめに
はじめに(上巻)

第1章 植物病と植物医科学

1.1 植物病とは
1.2 歴史と現状
1.3 植物医科学とその意義

第2章 植物病の種類と伝染方法

2.1 植物病の種類
2.2 伝染方法

第3章 臨床診断技術

3.1 植物病診断と病因の同定
3.2 問診技術
3.3 診断技術

第4章 治療技術

4.1 治療とは
4.2 治療の実際
4.3 樹木・果樹の治療
4.4 作物・花き・圃場の治療

第5章 防除技術

5.1 防除技術とは
5.2 農薬の種類
5.3 農薬の作用機作
5.4 薬剤耐性
5.5 農薬の安全性

第6章 予防技術

6.1 耕種的予防技術
6.2 物理的予防技術
6.3 化学的予防技術
6.4 生物的予防技術
6.5 病害抵抗性育種
6.6 発生予察
6.7 総合的有害生物管理

第7章 食と環境を守る植物医科学

7.1 食と植物医科学
7.2 食の安全・安心確保と 農産物の付加価値
7.3 食品の表示ガイドライン
7.4 フードロス
7.5 バイテク作物

第8章 植物医科ビジネス

8.1 食料生産を脅かす植物病
8.2 植物病院
8.3 植物医科ビジネスの展開

第9章 植物医科学の担い手

9.1 植物医師とは
9.2 技術士の国家資格を持つ植物医師
9.3 関連する資格

第10章 植物医科学に関連した法令と政策

10.1 植物医科学に関連した法令
10.2 植物医科学に関連した政策

第11章 植物病診断の実際

11.1 紛らわしい植物病の判別法
11.2 写真集(病徴と特徴)

終 章
索 引

書評


農薬工業会会長,本田 卓
ついに2008年刊行の上巻に加え、未刊の下巻部分を執筆者が全面的に書き直し含めた「植物医科学 第2版」が全ページカラーで刊行された。一般に理解されている微生物による植物病害だけでなく害虫、雑草や環境等による被害も含め植物病と定義し、この植物病を臨床場面で対処するべく、「植物医科学」は2005年に東京大学によって世界に先駆け提唱されたこれまでにない学問分野である。その提唱者は本学問分野の社会実装を目指し,本書においても植物医科学研究室の同学での設置や「植物医師」制度の創設と育成,「植物病院」の設立など,その社会的意義・必要性とともに詳細に記述している。

大多数の日本人にとり食べ物に不足を感じることは無いのが通常だろうが、2020年より続く新型コロナウイルスのパンデミックにより輸入穀物や飼料の価格が高騰し物流混乱も相まって一部の食料・飼料が不足するような事態が生じている。政府がとなえる食料安全保障に近年注目されてきたフードロス削減の必要性も加え、世界人口が増加の一途をたどる現状を鑑みると植物病による被害を軽減することの重要性への認識は高まりつつあると感じる。本書に記載されているように食料生産を国家的戦略ととらえている米国が植物病診断ネットワークを構築している事実をみても、本書の主張は傾聴に値すると考える。
農薬工業会は農薬製造企業34社を正会員としているが、会員企業の国内営業マンは植物病の診断から対処法の提案などを日常業務の一環で行っており、まさに本書が記す植物医科学をもって臨床を行う立場にある。本書に挙げられている最新の技術・知識を身に着けて植物保護という本来の目的を実現することがミッションである。その意味で、関連情報を網羅的に含む本書には参考となる部分が多いと思われる。歴史的なトピックスなども記載されているコラムは各章を読み終えた最後に豆知識を得たようで良いアクセントになっている。本書によると、全国に植物医師がすでに100名以上誕生し、植物病院もJAや大学・企業などを含むさまざまな機関に着々と設置されつつあるという。植物病の被害から植物を守るという意味で同じ目的意識を持つ植物医師は農薬製造企業にとり重要なステークホルダーでもあり、今後は農業生産力の向上と環境負荷低減の両立に向けて連携を深めていくべきと考える。

植物は食料・飼料やエネルギー生産だけでなく、庭の樹木や家屋内に活けた切り花のように私たちの生活を豊かにするものでもある。愛玩動物を家族同様に愛し慈しみその健康に気を配るのと同じように、家庭において大事に育っている植物を病気から守るべく専門家に対価を支払い診断や解決法を求めようという人も少なからずいると思うし、今後は増えていくと考える。植物医科学や関連する学問、さらにAIなど情報分析技術が進化していけば、大規模農業生産法人だけでなく一般家庭でも満足するような質で植物病を適切に解決できる日が来る可能性もあろう。本書がそのような未来を見据えた先駆的な刊行物となることに期待する。


(株)ニッポンジーン会長,米田祐康
待望の「植物医科学」の全編完結版が刊行された。植物医科学研究室が発足して16年が過ぎた。この間、東大植物病院では,数多くの侵入病害虫を発見し簡易・迅速・安価・高感度な診断キットや、侵入を警戒する植物病の待ち受けキットが開発された。植物医師も多数育成され、東大植物病院はいまや世界的にも例のない高い信頼性を備えた,診断できないものはない確固不動な診断拠点となっている。植物病院は植物医師の活動プラットフォームである。それらの学問的裏付けとなる教科書として「植物医科学 上」(2008,養賢堂)が13年前に出版され,「世界初の植物を診る本!」と注目を集め,同書に続いて下巻部が出版されるのが待たれていた。そして13年ぶりに完成し,上巻もこの間に更新された情報を改訂して上下巻合冊版となって出版されたのが本書「植物医科学 第2版」であり、これでもかというほどの情報量に驚かされる。

544ページの大著の本書を手に取ると,一見難しそうに感ずる方も多いかもしれないが,教科書は正確さが命なので,じつに丁寧に書かかれており,上巻は写真のみカラーであったが本書ではタイトルや説明の図にも色がついており理解しやすいようにと著者が気を配っていることがよくわかる。

1〜6章は植物病(微生物病,害虫病,生理病,雑草害,汚染物質害,気象害など)について精緻にかつ体系的に解説されている,他に類のない内容となっている。3章では特に最新の選択培地や遺伝子診断技術について,そのしくみから細かな手順にいたるまで懇切丁寧に説明が記載されており圧巻である。7章以降は,6章までの知識をもとに社会実装に役立つ社会的,経済的な側面からの記述が科学的記述を織りまぜつつ,これまた現場に役立つポイントにページが多く割かれ記述されている。
執筆陣も錚々たるメンバーであるが,教科書でときおり見かけるような,執筆者に平等にページを割いて集めたためにどの章も平板な内容になってしまったり,あるいは執筆者の得意な分野に偏った内容になっていたりするのとは異なり,全章にわたり,図表もスタイルに統一感があり,本文にも統一感があり教科書としてのクオリティの高さを感じる。調べ物があって索引から特定のページを調べるための書物というより,植物医科学を習得するための構造知とそのマネジメントを習得する読み物として,全章を通して読みやすいものとなっている。コラムも,目からうろこの,他書にはないユニークな特徴があり,どのページからも現場に携わる者に役立つようにという著者の細やかな気配りが伝わってくる。

難しい用語の解説や細かい説明は脚注が大いに役立つだろう。読者が個々の語句につまずくことなく読み進められるよう随所に工夫が凝らされている。いまやどんなことでもネット検索でググれば容易に情報を得られる時代であるが,そのなかでもやはり教科書の良さは失われることはないと,本書はそのことを証明している。植物医科学に興味をもつ者は,本書によって,植物医科学の体系的理解,社会の枠組みの中での役割,植物医師・植物病院のビジネス展開の可能性,関連した法令や政策のわかりやすい説明を通じた概要把握を網羅的に得ることができるであろう。

本書はとくに,農業生産や加工食料製造,花き・観賞植物を扱う企業、植物病の臨床検査薬や農薬製造の企業にとっては羅針盤でありバイブルになる。もちろん若い人材育成にも役立つに違いない。明日の植物医師を目指して目を輝かせる若人の良き教材としても本書の活躍は大いに期待される。企業にとっては「植物医科ビジネス」という言葉は新鮮に心に響くものがある。その真新しいテーマを論じた第8章は、新しいビジネスシーズが次々と浮かんでくるきわめて刺激的な章である。また,関連法令と政策についての第10章はビジネスを行うものとして、ややもすると軽視しがちなコンプライアンスを重視し,強靱なビジネスを持続的に展開するうえでかせない知と技の源泉である。研究者を支える知と技と合わせて、学べるところ満載の書である。


(株)サカタのタネ 代表取締役社長,坂田 宏
「植物医科学」は、農学のみならず、工学・医学・人文社会学など、あらゆる学問分野に横串を刺し、2008年に初めて体系化された学術領域です。本書はこの新たな領域における初めての教科書と言えるでしょう。植物を「診る」という視点に立って、最先端の科学と技術に明るく、体得した知見と技能をもって生命に寄り添える人材の育成、そして、植物を取り巻くさまざまな「現場」を重視した教育の強化を目指して本書は編さんがなされています。

農業生産で最も重要な事は、健康で良質な種苗の確保と維持です。健康で充実した種苗なくして、収量・品質・貯蔵性のいずれも期待が持てないでしょう。特に種苗の流通に際しては、微生物病や害虫病などに罹患していない健康な種苗が確保できなければ、生産者に不利益をもたらすのみならず、グローバルなビジネスが日常化している現在においては、輸出時に相手国の検疫を通過できません。ひいては野菜の種苗であれば、食料の供給、安心、安全にも大きな影響を及ぼすため、種苗の品質管理は種苗業に留まらず、農園芸業における最重要事項の一つです。高品質な種苗を生産する上で、病害虫管理や養分管理は欠かせません。植物病理学、害虫学、農薬学、雑草学、栽培学、分子育種学、植物生理学など細かく枝分かれした農学分野を統合化した植物医科学は、種苗に携わる方には必修の学問です。本書は、この学問分野を体系的にまとめた貴重な一冊と言えます。

本書前半では、病害虫や、生育環境に由来して罹患する「植物病」について、その歴史や種類、判別と診断方法、治療や防除と予防に関する技術や知識が、まとめられています。本書後半では、食料の安全と環境保全に関する「食と環境を守る植物医科学」、今後発展が期待される「植物医科ビジネス」、また関連する農業環境や生物多様性保全、脱炭素社会に向けた法令と政策、更には植物医科学の社会的役割に付随して「植物医科学に関連した法令と政策」が詳説されています。種苗業界のみならず、関連各業界の今後目指すべき方向について示唆が込められています。一方、章末のコラムもユニークかつ多様なトピックを取り上げており、興味深く、本書の重要なエッセンスとなっています。

本書は、植物・微生物・昆虫といったミクロな生物間の相互作用からの視点に留まらず、それらを含む生態系を俯瞰的に眺める視点、さらには人間とその社会への視点、そして、それら全てを包含する地球環境のマクロな視点といった多層なレンズで、それぞれのテーマに焦点が当てられて解説されています。植物・微生物・昆虫に興味のある方、一歩引いた距離から自然現象を眺めたい方、現場に役立つ診断方法を知りたい方、新たなビジネスの創出といった社会展開に興味のある方など、多くの方にとって価値ある情報や知識が得られるでしょう。難解語句にはルビが振られ、専門用語には脚注に詳細解説が施されているため、大学に入学したての若い方にも読みやすく、農業関連企業や公的機関などにおけるテキストブックといった活用も期待できるでしょう。全頁フルカラーで、初版よりも文字が大きくなり読みやすくなっているのもポイントです。

植物や環境、社会問題に関心のある方、現役の植物医師あるいは植物医師をめざす方、種苗・農薬・肥料・検疫・農業法人・食品企業・樹木医・土壌医のほか、園芸愛好家や緑地・公園・庭園管理者の方々にも必携のバイブルとして推薦いたします。もちろん、良質な種苗の安定供給を使命とし、種苗の開発、生産、供給を担う種苗業を営む私たちにとっても必読の一冊です。

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