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「車両の軌道制御の基礎(追従走行と切り返し)」
非線形性を持つシステムに対しては、その非線形性を考慮した制御法を用いることでよりよい制御ができることがある。本稿では車両の非線形性を考慮した制御例について、運動モデルにもとづいた解析や理論的な制御則の導出の例を紹介する。
自動車や移動ロボットに用いている通常の車輪は、車軸に対して垂直な方向にしか進めない。したがって、自動車や移動ロボットなどは、前輪の向きを変更したり、各車輪の速度比を変えたりすることで進行方向を変更する。車両の走行軌道は、この方向変換をおこなう速度(旋回角速度)と前後に進む速度(並進速度)の組み合わせによって決まる。これらの速度による車両の位置と向きの変化を表す運動モデルは三角関数を含む非線形な微分方程式で表される。
2輪の移動ロボット、4輪の自動車、けん引車両などの非線形な運動モデルは、システムの次数は異なるが、chained formとよばれる正準形に変形できる。本稿ではわかりやすさのために、2つの駆動輪を持つ移動ロボットを例に説明するが、同様の解析や制御則の設計はchained formに変形できる4輪車両などの運動制御にも適用可能である。
まず、2章で2輪の移動ロボットの運動モデルを示す。3章でPID制御を用いて軌道追従をおこなう場合について線形制御理論にもとづく解析とその限界について述べる。その後、非線形性を考慮した軌道追従制御則の例を示して違いを比較する。4章では自動車の切り返し動作のように制御則の切替えをおこなう際に考慮すべき点を述べ、3章で述べた非線形の制御則を組み合わせて車庫入れシミュレーションをおこなった結果を紹介する。
東洋大学 理工学部 機械工学科 教授
山川聡子
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