説明
開発途上国を中心として世界人口の爆発的増加が起きている。これを引き金に21世紀における世界の食料、環境、エネルギーなどの問題の深刻化が懸念されている。また、こうした問題に追い打ちをかけるものとして地球の温暖化が話題になっている。これらの問題には不確実性が多分に存在するが、確実に言えることは、これから迎える21世紀には人類を始めとする生物の生息の場としての地球の諸条件は、現在よりも悪化するし、これまでと同じエネルギーや資源の浪費型の開発を行い続けていれば、事態の悪化が加速されるということである。農業環境技術研究所は、農業と環境とのかかわりに関するさまざまな問題を研究している。その中の一つの重要な研究テーマが農業と地球温暖化のかかわりである。温暖化に伴う日本と世界の食料生産がどう変化するかに絞って、これまでの研究の現状と今後の問題を整理しようとしたのが本書である。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第二次評価報告書では世界的にみれば、温暖化に伴う世界の食料生産力はさほどの影響を受けないとしているが、それはあくまでも平均値であり、生産力の予測を作物成育の気象条件面だけから行ったものに過ぎないといえよう。例えば、温暖化すればシベリアでも作物生産ができる条件が生まれるとしても、凍土が融けた排水不良の土壌であれば、排水整備がなされなければ実際の作物生産は無理である。このように現在の温暖化に伴う食料生産の予測の精度はまだまだ低いのが実態である。本書は1996年に農業環境技術研究で開催した農業環境シンポジウム「21世紀の食料確保と農業環境」をベースにまとめたものである。
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