設計の科学 チームづくりの数学

―ユング分析心理学とプラトニック変換―

1,760 (税込)

スタンフォード大学の設計グループでのダグラス J. ワイルドの講座内容を紹介。

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著者:
判型 A5判
第1版
ページ数 113
発行日 2012/10/30
ISBN-13 978-4-8425-0506-0 C3053
ISBN-10 4-8425-0506-0
JAN 1923053016004
図書館: カーリル
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目次

第1章 チームづくり
第2章 本書の背景となる情報
第3章 ユングによる人間心理のタイプ
第4章 M BTI タイプ
第5章 チームづくりの数学
第6章 チームづくりの実際
参考文献
索引
あとがき

説明

本書を執筆するきっかけは,2006年に失敗学会でダグラス J. ワイルド(スタンフォード大学名誉教授)に御講演をいただいた【Teamology】である.この【Teamology】という言葉は,(team)と,(~に関する学問)という意味の接尾語 (-ology)をくっつけた,ワイルドがひねり出した言葉である.日本語では,さしずめ『チームに関する学問』だろうが,昨今の “○○学 ” という言葉の流行から『チーム学』と命名してもいいだろう.本書は,チーム学でワイルドが展開した心理機能タイプの定量化を説明する目的で書いた.

ワイルドは,1989年に MBTI (Myers - Briggs Type Indicator) を学び,その定性的なルールに従って心理機能タイプを提示する同手法に定量的な評価を与えることで,もともと心理機能タイプを提唱したユングの解説に近い結果を導き出した.さらにこれをチーム形成に応用し,スタンフォード大学,カリフォルニア大学,成均館大学,上海交通大学,ミシガン大学などで,その効果が実証されている.

ワイルドの原著,“ Teamology (チーム学)” と“Jung’s Personality Theory Quantified (定量化されたユングの性向論) ” は,ともに工学系大学生,大学院生,多少の線形代数をかじる社会人,MBTIを実践する人たちを対象に書かれたため,2次元ベクトル空間における線形写像の説明が多い.そこで本書では,これら著書の後半に現われる複雑な代数計算や組合せを省き,ユングの心理機能タイプを定量化するのに必要な最低限の線形代数を説明する.ワイルドは,極端な心理機能タイプを持つ人をプラトンの理想と呼び,その心理機能タイプの計算から,ここで使用する線形変換を導き出した.筆者は,この変換をプラトニック変換と呼ぶことにした.この解説は,「第5章 チームづくりの数学」に押し込めてある.

「第2章 本書の背景となる情報」には,心理学の歴史について多少述べた.筆者は心理学者ではないので,その内容は心理学の歴史総説ではなく,その言葉の成り立ちから,活躍した人たちの中で 特にユングの分析心理学につながる業績を残した人や,科学的手法を取り入れた人たちに焦点を当てていることをご了承いただきたい.

第2章の最後には,自殺に関する統計について書いている.一見,無関係なトピックのようだが,自殺は人間の心理状態に非常に影響され,ユングもその著書の中でたびたび精神疾患を解説している.チーム学は,より強いチームを構成するのが目的だが,その途中で,一人一人の構成員の心理機能でどれが強いか,どれが弱いかを提示する.驚くなかれ,うつ病発症のきっかけは,弱い心理機能ではなく,その人が持つ強い心理機能が原因となることが多い.ここにこの統計を書いたのは,本書を通して自己の心理機能タイプと強度を知り,要注意であれば,それをまず理解していただけるかもしれないと思ったからである.もちろん,自殺の問題は複雑で多くの方が取り組んでおられ,本書の理論展開がすべてを解決しないが,一つの考え方を提起できればよい.

第3章には,「ユングによる人間心理のタイプ」について解説した.これは,“Psychologische Typen”の10章,11章を和訳した『人間のタイプ』が,いまや絶版となり,ほかにこの部分を解説した書籍はあるものの,この本に立ち返ってユングの言葉をもう一度吟味したものである.

「第4章 MBTIタイプ」では,ワイルドが人間の心理タイプに興味を持つきっかけとなり,アンケートへの回答をもってその人の心理タイプを提示する手法を確立,爆発的に世に広めたMBTIについて解説する.

「第6章 チームづくりの実際」では,難解なユングの言葉をわかりやすい言葉に落としたワイルドの説明を紹介し,自分たちが提示された心理機能タイプが,チームの中ではどういう意味を持つかを解説した.さらに,チームを形成するときに,メンバーを自由に選択できるときは何を目指し,すでに確立されたチームであれば,自分たちの弱点をどう見出し,何に注意すればより強いチームとなれるかを提案した.最後に,実際にチーム学を適用してみた例を二つ挙げて解説した.

「設計の科学」シリーズ1冊目の『価値づくり設計』を出してから,本書『チームづくりの数学』で2冊目になる.この『チームづくりの数学』はシリーズ1冊目の続編ではないが,どちらもスタンフォード大学の設計グループで教鞭をとっておられる先生方の講座内容を紹介するものである.また,価値づくり設計の実践講座ではチームを形成してプロジェクトを遂行するので,自分のチームの弱点を知り,不足を補う協力体制の確立は重要である.

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