説明
パソコンのハードディスク,エアコン,自動車など,身の回りで制御が働いている機器は数多くある。さらに大規模なシステムを考えてみると,工場の製造ライン,電車,航空機や人工衛星などがあり,高精度な動作や安全性の確保のため制御は重要な役割を果たしている。それらの制御システムの解析・設計法の基礎を教えてくれる制御工学は,機械,電気,鉄鋼,化学,医療・福祉など,あらゆる産業分野で必要とされている。
制御工学が持つこのような分野横断的な性格は,大学・高専のカリキュラムからも見てとれる。機械系,電気系,情報系など,さまざまな学科において制御工学の授業が行われており,筆者が所属する応用生命システム工学科においても,ロボット制御の基礎として,あるいは生体や生命現象のダイナミクスを解明するための基礎として制御工学は重要な科目として位置づけられている。
筆者が山形大学に着任後にこれらを授業を担当することになったとき,授業に適した教科書を探した。制御理論の研究でご活躍されている先輩方が書かれた良書は数多いが,担当する授業にちょうど適した教科書となると,見つけ出すのがなかなか難しかった。制御理論の主要な定理が網羅され,それぞれに厳密な証明が記された本は,制御を研究するためには必須の書であるが,制御工学を初めて学ぶ学部生が 1 学期の授業で使うには消化不良となってしまいそうである。そんな危惧から筆者はプリントを自作し授業で配布することにした。
本書は,制御工学の習得に必須と思われることを選び出し,それらをできるだけわかりやすい文章で解説するよう心がけながら執筆した。「授業にちょうど良いもの」ということで授業で配布していたプリントのテイストをできるだけ守りながら一冊の本としてまとめあげた。
本書の構成は,第 1 章から第 15 章までは,伝達関数に基づく古典制御理論。第 16 章から第 24 章までは,状態方程式に基づく現代制御理論について書かれている。授業にフィットさせることを狙って書いてあるので,前・後期の 2 学期で制御工学の授業があれば,この本に書かれてあるすべてを学ぶ(あるいは教える)ことができると思う。
レビュー
レビューはまだありません。