説明
日本農学会は、狭義の農学はもとより農芸化学、獣医・畜産学、水産学、林学、農業工学、農業経済学、さらには広く生物生産、生物環境、バイオテクノロジーの各分野に関わる基礎から応用に至る広範な学術分野をカバーする51の農学系学会の連合体であり、会員学会間の情報交換、各学会活動の連携、集約、広報等の活動に努めてきました。その学会活動の一つとして、日本の農学が当面する様々な課題をテーマに掲げ、そのテーマに精通した研究者に講演をお願いし、学生、院生、若手研究者、さらには農学に関心を持つ一般の方々を対象としたシンポジウムを平成17年度から毎年秋季に開催してまいりました。
そこで、平成23年度は「環境の保全と修復に貢献する農学研究」と題して秋のシンポジウムを開催いたしました。
長年にわたる人類の文明の高度化を目指す種々の活動が、地球環境劣化を加速せしめていることは確かであります。そしてこの地球環境劣化が、土地や土壌の持つ生物扶養力・浄化機能を劣化せしめ、農業生産に打撃を与えて21世紀における人類、全生命体の生存基盤を危うくしていることも確かであります。さらに我が国では、平成23年3月11日に宮城沖で発生した巨大地震は津波と原発事故を引き起こし、農業・水産業・畜産業等に未曾有の被害を与えました。
本シンポジウムでは、地球上の多様な生態系に観られる様々な環境劣化プロセスを提示するとともに、環境の持つ保全機能を人為的に修復するための手法を明らかにし、それぞれの環境と調和した21世紀の自然資源利用のあり方を社会へ提言することを目的としました。それぞれの課題の中で、大震災からの復興に向けて農学が果たす役割についても可能な限り言及いたしました。特に、第3部におきましては、東日本大震災によって引き起こされた津波による海岸林の被害、および原発事故による土壌の放射能汚染問題を取り上げ、早急の復旧・復興を目指して、科学者の視点から考察いたしました。
ここに、シンポジウムにおける講演と討論の概要をまとめ、「シリーズ21世紀の農学」の1冊として刊行いたします。本書の刊行によって、環境の保全と修復に貢献する農学研究に対する社会からの理解が一段と深まることを期待いたしております。
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