目次
第1部 残留応力の基礎
第1章 応力とひずみ
第2章 残留応力の発生・評価・制御
第3章 残留応力と強度評価
第2部 X線応力測定の基礎
第4章 結晶材料
第5章 X線と回折
第6章 多結晶のX線応力測定
第7章 X線応力測定の実際
第3部 X線応力測定法の応用
第8章 シンクロトロン放射光による応力測定
第9章 中性子回折による応力測定
第10章 多相材料・複合材料の応力評価
第11章 表面改質・コーティングの応力評価
第12章 薄膜の応力評価
第13章 接合・溶接材の残留応力評価
第4部 結晶弾性のマイクロメカニックス
第14章 単結晶の弾性変形
第15章 単結晶のX線応力測定
第16章 多結晶・多相材料の回折弾性定
第17章 繊維配向を有する立方晶多結晶薄膜のX線応力測定
付録
A cosα法による多結晶のX線応力測定
B 表面除去による残留応力分布の補正
C 圧電セラミックスのひずみ測定
D ReussモデルおよびVoigtモデルによる多結晶の弾性定数の導出
E マイクロメカニックスによる多結晶・多相材料の弾性定数の導出
索引
説明
機械や構造物中に存在する残留応力は「隠れた力」ともいわれ、部材の破壊や疲労強度に大きな影響を持つばかりでなく、部材寸法の安定性をも左右する。ほとんどの部材や構造物は残留応力を持っており、予期せぬ変形や破壊が生じたときには、その原因を残留応力に帰着される場合が多い。さらに、残留応力は生物の血管や骨などの生体においても重要な役割を果たしており、例えば血液が流れているときの応力分布が均一に近くなるように、血管には残留応力が分布していることがわかってきている。残留応力は予測することが難しい場合が多く、残留応力の実体の把握のため実験的な測定法が不可欠となっている。
残留応力の実験的測定法は、大別すると破壊的方法と非破壊的方法に分類される。破壊的方法では、構造物そのものが破壊されてしまうため、品質管理などの観点からは非破壊的方法が重要である。非破壊的方法のうち、X線応力測定法は測定精度が高いことから最も広範に使用されており、測定法の標準も制定され、現場技術として広く定着している。近年の検出器あるいはデータ整理手法や解析手法の飛躍的進歩により、より短時間で高精度な応力測定が可能となっている。
X線応力測定法は、結晶格子をゲージ長さとして、結晶によるX線回折を利用してひずみを計測する。このため、原理的にはあらゆる結晶質材料に適用できる。しかし、実験室で得られるX線の侵入深さは表面から高々数十マイクロmであるため、X線で測定される応力も表面極近傍の応力に限られるという限界があった。
近年、中性子回折による応力測定が広く利用されるようになってきた。中性子は材料中に深く侵入し、かつ結晶による回折現象を生じるため、X線と同様の残留応力の測定が可能であり、材料内部の材料内部の残留応力測定に適している。一方、シンクロトロン放射光は、新しいX線光源として高輝度、高平行度さらに任意波長の単色線が得られるなどの特徴を有するため応力測定に利用されている。特に、第3世代のシンクロトロン放射光から得られる短波長の高エネルギーX線は、侵入深さが中性子よりは浅いが、実験室X線より深く、空間分解能に非常に優れている。最近では、実験室X線、放射光X線、中性子の相補的な使用によって、表面から内部までの残留応力分布の高精度のマッピング測定が可能となりつつある。
本書は、4部構成になっている。第1部は残留応力の基礎、第2部はX線応力測定の基礎であり、初心者でも理解できるように残留応力とX線応力測定の基礎について説明した。第3部は応用編で、シンクロトロン放射光および中性子による応力測定について述べた後、多相材料、表面改質、コーティング、薄膜、接合・溶接材料の残留応力測定について、その基本的手法と解析法および適用例に関する最新の成果も含めた。第4部では、X線による応力評価を詳しく検討する際に必要となる単結晶、多結晶、多相材料および薄膜のマイクロメカニックスについて述べた。
このように本書は、初心者でも学べるように、残留応力に関する材料力学の知識と結晶に関する基礎からとき起こし、X線応力測定の実験をすることが可能となるように記述した。さらに進んで、放射光および中性子による応力測定にも低抗なく導入するとともに、新技術・新材料に関する最新の進歩について説明した。さらに、必要な事項について付録としてまとめた。
本書が、材料強度に関する研究に関係して残留応力のX線評価を始める学生ばかりでなく、既に材料開発や材料評価に携わっている研究者や、残留応力の間題に直面している技術者の方々の座右の書として役立つことを願います。
(序文より抜粋)
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