説明
今日、産業活動や日常生活など多様な人間活動によって加えられる環境への負荷を軽減することが、様々な場面で求められている。
近代農業は化石エネルギーへの依存度を高めることによって収量を飛躍的に増加させたが、化石燃料の使用は二酸化炭素等を排出し、環境への負荷を増加させる結果となった。さらに農耕地では、水田や家畜によるメタンの排出、施肥窒素やふん尿由来の亜酸化窒素の排出なども認められている。また、硝酸性窒素やリンなどによる水質の汚染、肥料・資材由来の重金属など、農業活動による環境への影響等、集約的農業の進展に伴って農業から排出される様々な環境負荷が指摘されている。
企業が商品を製造し、それが消費される過程で、環境に対しどの程度の影響を及ぼしているか、それをよりよく把握し削減するための手法開発に世界が関心を持っている。この手法にライフサイクルアセスメント(LCA)がある。国際標準化機構(ISO)により、1997年に「ライフサイクルアセスメント(LCA)-原則及びフレームワーク-」が示された。これは、製品等の原材料の採取から、製造、使用およびその処分に至る生涯を通じての環境影響を調査する技法であるLCAについて、その調査の実施および報告の作成にかかわる原則ならびに枠組みを提示したものである。
従来の環境アセスメントが環境への負荷が発生する各段階での影響評価であったのに対し、LCAは資源の利用や環境への影響を総合的に考え、製品の原材料の採取から、製造、使用、処分に至るライフサイクル全体を通して環境影響評価を行い、製品の開発・改良・企画戦略、公的政策立案などに適用することを目的としている。わが国においても、ISOの基準に則って産業活動を行う企業が増加しているが、こうした考えを農業にも導入することが環境保全型農業の確立にとっても必要である。従来のように環境への負荷を評価するのみではなく、農業における環境へのプラス効果も考慮した統一的な評価手法が極めて重要である。
こうした視点から、農業環境研究においてもLCA手法を導入し、これらの問題の解決を図ることが求められる。
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