説明
成層圏のオゾン層は、地球に降り注ぐ生物に有害な太陽放射中の紫外放射(UV)を吸収する重要な役割を果している。1982年、日本の南極観測隊員が南極上空成層圏のオゾン量が異常に減少しているのを発見、さらに1985年、アメリカの気象衛星がオゾン層にあたかも穴があいたように見えることを観測、これを「オゾンホール」と名づけた。この原因がフロンなどの化学反応の結果とわかり、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の国際会議に基づいて、1995年その生産が全廃された。 しかし、1996年秋の調査によると、オゾンホールは面積にして南極大陸の約1.8倍に広がっており、使用されているフロンの回収、ほかの規制が守られたにしても、その効果にはなお時間がかかることが懸念されている。また紫外放射(UV)、とくにUV-Bについては、その区分波長が専門分野によって若干異なって使用されており、またその計測器も近年著しく発達したものの、UVに関する同様な実験を同列に並べて比較評価するとき、計測器による数値の整合性に戸惑いを感ずる場合も生じるようになった。 照明学会では1993年に1.生物に及ぼす紫外放射の生理・生態的作用の効果、2.地球環境問題をふまえた紫外放射の生物影響、3.生物産業への紫外放射利用の現状と将来、4.UV放射光源および測定の現状と問題点、を調査し、1996年に報告書を取りまとめた。本書はこの報告書を中心に、生物とUVに関してその概念、影響および利用、計測など、UVと生物産業についての概要がわかるように、新しい知見などを加えて再編したものである。
レビュー
レビューはまだありません。