説明
巻頭記事「流体シミュレーション・ソフトウェア講座」
Flowsquare+による数値熱流体力学
Flowsquare+では、流体速度場の予測のほかに、流体速度により輸送される各種物理量の分布を考慮することも可能である。
そこで、本稿では、流体による輸送される物理量として、流体中のある物質の質量分率に着目し、質量分率輸送に関するシミュレーションを通じて、物質輸送に関する理解を深める。質量分率の考慮が有効な例として、本稿では、咳による飛沫の広がりのシミュレーションについて解説する。
ここでは、さまざまなウイルス感染メカニズムの1つと考えられている咳による飛沫の広がり方のシミュレーションを解説する。
一般的に飛沫現象では、エアロゾルといった微小な液体粒子が周囲流体運動により輸送され、それと同時に蒸発・変形・分裂する要素的現象から構成されるため、厳密な意味で飛沫のシミュレーションをおこなう場合は、その微小な液体粒子をも解像し、粒子内の対流現象も考慮しなければならない。
そのようなシミュレーションには、スーパーコンピューターにおける何千、何万並列という規模の並列計算が必要で、一般的に実施できるものではない。
したがって、本稿で解説する咳による飛沫の広がりのシミュレーションでは、本現象を「咳により排出された口元からのガスの濃度(質量分率)の流体輸送」 と簡略化してシミュレーションを実施する。
本稿で紹介する本入力ファイルに、さまざまな障害物(パーティションや遮蔽物)を追加して、飛沫の広がり方の変化について理解を深めることも可能だ。
Nora Scientific 代表
東京工業大学 工学院 助教(テニュアトラック)
源 勇気
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