機械の研究 2020年7月1日発売 第72巻 第7号

2,750 (税込)

本誌「機械の研究」は、1949年(昭和24年)、それまでの
機械工学の概念を脱却して、工学・工業の一環としての機
械工学に関する新しい研究と技術の進歩を提供する事をそ
の主眼に創刊した月刊誌です。工学全般・工業に関連した
研究分野において、最新かつ重要な学理および興味深い研
究成果を平易に解説しています。

在庫あり

判型 B5判
発行日 2020/07/01
JAN 4910028170707
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目次

展望・総説・解説

粉体成膜プロセス研究のハイスループット化のための
データ駆動型粉体プロセス・インフォマティクス

東京大学 大学院工学系研究科 准教授
長藤 圭介

九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門
井上 元

横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門
荒木拓人

横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門
黒田義之

金沢大学 理工研究域機械工学系
辻口拓也

九州工業大学 生命体工学研究科人間知能システム工学専攻
長 隆之

連載講座

CFDの基礎講座(30)
構造保存型離散ナブラ演算子法による定式化 その2

慶應義塾大学 名誉教授
棚橋隆彦

詳しく学ぶ ねじ締結の基礎(16)

酒井ねじ締結相談室 室長 工学博士
日本機械学会フェロー
酒井智次

機械構造用金属材料の超高サイクル疲労(26)
6. VHCF–2~VHCF–4の10年間の研究動向(6)

立命館大学 名誉教授
酒井達雄

パリ協定以降の世界と日本のエネルギー動向(27)
再生可能エネルギー(太陽光発電)の課題と展望 その1/2

一般財団法人 航空宇宙技術振興財団 評議員
伊藤義康

サウンドデザイン論(13)
音をデザインし製品価値を高めるには

広島市立大学 教授
石光俊介

データで学ぶ 超耐熱合金切削の基礎技術とトラブル対策(17)
第6章 ドリル切削の基礎技術(2)

ものづくり人材育成塾 難削材切削技術研究所
狩野勝吉

産業安全工学(33)
環境適合技術と安全性(2)

有明工業高等専門学校 創造工学科 教授
堀田源治

コラム:一杯のコーヒーから(162)

知について考える(その3) ―Mahalanobis Distance–Pattern (MDP) Approach―

Stanford University visiting professor
慶應義塾大学 顧問
福田収一

新刊紹介

工学・工業界ニュース

説明

巻頭記事「データ駆動型粉体プロセス・インフォマティクス」

日本のものづくり産業は、高度成長期後も競争力を増してきた。

しかし、そのうち、大規模集積回路(LSI)をはじめとするデジタルエレクトロニクス産業は、
2000年を境に、国産製造装置と共に他のアジア各国へ技術が流れ、今では一部を除いて当時の産業競争力はない。

一方で、蓄電池や燃料電池など、材料・粉体プロセスからなる「アナログ産業」は、
その複雑現象から技術流出がされにくく、今でも世界をけん引する産業が残っている。
材料開発は、所望の電気特性、化学特性、磁気特性、熱特性、機械特性などを満足する
元素の組合せパターンが膨大で、複雑メカニズムのため、論理的設計が困難で、試行錯誤で
新材料を見つけ出しているのが現状である。

さらに、それらの材料を微細構造にし、適切な性能を発揮させる粉体成膜プロセスも、
その現象メカニズムは複雑で、プロセス設計者と現場作業者の勘コツ・すり合わせに依存している。

これらのアナログ産業は、日本人の勘コツ・すり合わせの文化が助けて、いまだに競争力がある。
しかし、米国の2011年のマテリアルズ・ゲノム・イニシアティブ(MGI)に始まり、
マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の流れで、材料科学と計算科学を融合させた手法で、
世界の材料開発スピードが加速している。

データ駆動型の材料開発という意味で、日本は米国に後れをとっているだけでなく、
絨毯爆撃とAIの組合せで中国にも追い越されつつあり、その猛追は、粉体プロセスにも及びつつある。
とはいえ、計算科学では表現できない開発現場での勘コツ・すり合わせの必要性はなくならず、
材料開発と粉体プロセスの一貫開発が必要な製品にはまだ競争力があるが、
勘コツ・すり合わせの技術にデータ科学を融合させた日本流の手法が今こそ必要と考える。

そこで、この競争力を維持・加速するために、
「粉体プロセス・インフォマティクス」
というコンセプトを提案した。

日本の勘コツ・すり合わせに、間接センシングによる
中間データ取得および機械学習という武器を持たせることで、
プロセス開発のスループットを大幅に向上し開発期間を短縮、
さらにこれまでにない性能の膜の開発、材料探索への
フィードバックに貢献する。

このコンセプトは、著者らが
科学技術振興機構未来社会創造事業「共通基盤」領域令和元年度
に採択された課題である
「粉体成膜プロセス研究のハイスループット化のためのデータ駆動型粉体プロセス・インフォマティクス」
として推進している。

図1に燃料電池を例とした概要を示す。
出発材料(カーボン粒子、触媒粒子)を微構造化(燃料電池電極)し、
量産(燃料電池スタック)する間には、粉体成膜プロセスレシピ作成と
そのサンプルの評価、さらにフィードバック・レシピ改善を繰り返す工程がある。
燃料電池は、材料自体の性能だけでなく、粉体成膜プロセスに基づく微構造の
つくり込みが欠かせない。

図1 データ駆動型粉体プロセス・インフォマティクスの概要

本プロジェクトの特徴は、プロセス中の物理現象をなるべく象徴する「中間データ」を取得し、
プロセスパラメータと性能(評価データ)を紐づける機械学習システムのための試行実験の組合せを
最小限にするところにある。

材料開発と量産の間のプロセスと評価の部分を、プロセスパラメータ・評価データ・中間データを
機械学習システムで紐づけをし、実験計画・情報管理・結果考察をオンラインでおこなうシステムにすることで、
粉体成膜プロセス研究のハイスループット化する。

東京大学 大学院工学系研究科 准教授
長藤 圭介

九州大学 大学院工学研究院 化学工学部門
井上 元

横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門
荒木拓人

横浜国立大学 大学院工学研究院 機能の創生部門
黒田義之

金沢大学 理工研究域機械工学系
辻口拓也

九州工業大学 生命体工学研究科人間知能システム工学専攻
長 隆之

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