説明
今月のピックアップ「長崎のウシの去勢術」
家畜の去勢術は古い畜産技術の一つである。
例えば、古代ギリシャの哲学者アリストテレス(BC.384年~BC.322年3月7日)の『動物誌』の「第二十一章 胎生四足獣の交尾と妊娠(ウシ)」に、「雌ウシは、一般に十五年生き、雄ウシも[睾丸を切り取って]去勢すれば、同じである。
あるものは、体が健康なら、二十年、あるいはそれ以上生きる。現に、ウシでもヒツジも同様、去勢したものを馴らしてリーダーにする」とあり、ギリシャ世界では、睾丸を切り取った去勢が行われていたことが文献により確認できる。
また、ここで、去勢すれば、雌ウシのように長生きできるという考え方も当時あったことが示唆される。さらに、群飼される放牧・遊牧のウシ・ヒツジ集団のリーダーとして調教していたと想像される。
現代の『畜産大辞典』によれば、ウシの去勢とは、「雄性ホルモンの影響を取り除くことによって、おもに性質をおとなしくして飼養管理を容易にし、外貌や肥りやすさ、脂肪の付着・沈着など、肉質を雌肥育牛に近づける」ことを目的にしているとされる。
アリストテレスのいう長生きには言及されていない。また、日本における去勢の歴史も良く知られていない。そこで、長崎出島には、オランダ商館があり、出島商館内にウシが飼われていたことから、海外からの家畜の去勢術に関する情報があったと考え、長崎のウシの去勢術の調査を行った。
広島大学大学院生物圏科学研究科・長崎県肉用牛改良センター
松尾雄二
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