説明
果樹の品種育成は、主に交雑育種によって行われてきた。多くの成果が上がっており、リンゴの「ふじ」、ナシの「幸水」、ブドウの「巨峰」など顕著な例も多い。
果樹の交雑育種では、交雑して種子をとり、播種して実生とする。樹を育てて果実を成らせ、目的とする特性を持つ個体を選ぶ。目的に合った個体を1つ選ぶことができれば、それは接ぎ木で繁殖され、新品種として広く栽培される。
単純な過程であるが、一般に10年以上の年月がかかる。樹が成長して果実を結実するまでに時間がかかること、また、果樹生産に重要な形質の多くが量的形質で環境変動を受けやすいため、特性を見極めるのに年月を要していることが主な理由である。
育種は商品生産性の高い品種を作ることを目的としているので、品種としての特性を知るには、栽培技術に通じて樹体を育成でき、商品性の高い果実を生産できることが必要である。
育種を成功させる道は、交雑から生まれる子をできるだけ正確に予測し、適切な交雑組合せを選ぶとともに、目的とする子が生じる確率をもとに必要な数の交雑実生を育成すること、そして、一定の栽培条件で実生を育成し、効率的かつ確実に目的とする実生を選抜することにある。
本書は、果樹育種の現実に近いモデルを用い、この方法の理論化と体系化を行ったものである。本書が、果樹育種に取り組む方々、学ぶ方々、関係した研究をする方々などに資するものとなれば幸いである。
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