説明
グリースは簡単なシール機構で保持でき、少量でも長期間の潤滑が可能なため、古くから多くの機械要素の潤滑剤として用いられてきた。とくに今日、グリースの用途は、自動車や鉄鋼設備などの各種部品はもちろん、半導体や情報、通信産業あるいは食品産業等の分野にも広がっており、機械装置の高温・高速条件での使用、小型化、低発塵性や音響特性の向上、安全性と地球環境への配慮などに対応するため、グリースにも、従来の潤滑性能ばかりでなく、新たな高機能、高付加価値化への要望が高まっている。
このような状況に鑑み、日本トライボロジー学会第2種研究会のグリース研究会では、創立30周年を迎えて間もない2002年、最新の技術を盛り込んだグリース潤滑に関する専門書籍出版の企画を開始した。この検討の結果、2003年2月6日にグリース研究会を母体とする編集委員会が構成され、それから約4年を経過して世に送り出されたのが本書である。
本書は、グリース潤滑技術の専門家のみならず、潤滑技術に関心のある技術者、研究者、そしてこれからグリース潤滑を学ぼうとする初心者をも対象としている。そこで、常に進化するグリースの最新情報を取り入れ、教科書としても現場の実用書としても活用できる座右の書という方針の下、潤滑グリースの歴史から始まり、先端かつ高度な内容までをわかりやすく解説できるよう、基礎編と応用編に分ける構成とした。すなわち、グリースの組成、選定と試験法、レオロジーと潤滑作用、劣化と潤滑寿命などを基礎編で、転がり軸受のグリース潤滑、各種用途の最新適用事例、環境調和・安全性への対応、使用法などを応用編で説明し、参考のためグリース関連用語集と主要キーワードの和英対訳を付している。
本書の執筆者は、グリースの開発や活用の現場に精通している、あるいはグリース潤滑の研究に関連した各方面で活躍している研究者、技術者、大学人ばかりであり、本書には、非常に豊富な経験による数多くの知識、情報、ノウハウが含まれている。したがって、それらを整理し、まとめるにあたって、かなりの時間を要した点はやむを得ないことであった。また、この編集の過程で、潤滑油と共通する基礎的な潤滑機構そのものの詳細については、最近も多数が出版されているトライボロジー関係の他書にゆずることとしたが、その分、グリースに特有な事項、特徴的な現象、さらには実用途での具体的事例などが、ふんだんに紹介できたものと自負している。本書が、潤滑グリースに関する問題の解決と、その技術の今後の発展に役立つ一冊となれば幸いである。
(序文より抜粋)
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