説明
日本の食糧自給率はカロリー計算で40%以下までに低下し、これは主要先進国で最低となり、農耕地は1人当たり400平米とこれも最低である。 日本には470万頭の牛と990万頭の豚が飼われているが、これに必要な飼料の大部分はアメリカに依存している。これらの家畜の肉を生産するのに要するエネルギー効率は、穀物を直接摂取するのに比べて1/11~1/7となる。このように海外に依存している畜産は、局所的に大量の排泄物を生じ、その処分が大きな問題であり、それが水域等の富栄養化の原因となっている場合もある。 農家の総所得の内、農業所得はわずか14%であり、農業所得の低さが際立っている。これが農業離れを助長し、農業従事者の高齢化を招いている大きな要因になっていると思われる。 現在、地球上の人口は年間8,000万人増加しており、この人口を養う食料を生産するために、化学肥料は不可欠な資材であるが、過剰の肥料が地下水や河川水に移行し、閉鎖水域の富栄養化、地下水汚染の一因となった。そして、化学合成資材はすべて悪という非科学的な風潮がまかり通り、化学肥料が批難されている。 また、農業環境は地球温暖化というこれまで経験したことのない事態に遭遇することとなった。これは地球全体の食料生産に関わる問題である。 以上のように、日本農業が抱えている問題は環境面から見ただけでもきわめて多岐にわたる。本書はこれらの問題について研究当事者の反省も含めて分かりやすく解説して、その対策を提案して環境保全型農業の推進に寄与することを目的としている。すなわち、農業をめぐる環境問題、輸入食飼料と環境負荷、食料生産における肥料の必須性、日本の畜産問題、環境負荷軽減のための肥料および施肥技術等を内容としている。特に環境負荷軽減施肥法では現場における施肥の実態、機能性肥料の形態と合理的施肥技術、施肥と作物の品質等につき各作物毎に具体的にそれぞれの項目について詳述した。さらに持続的農業の展開に向けて、土地利用の向上、食料自給率の向上と輸入食飼料の削減、水田の働きの評価、有機農産物の規格化および生産性、施肥技術の高度化等について提言を行っている。 本書は、大学農学部・生物生産学部学生、農業大学学生、農業高校の先生の参考書としてのみならず、農業関連試験研究機関・行政職員、農業改良普及員、農協指導員および農家のマニュアルとして最適な書である。
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