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「カルマンフィルタとその周辺および応用(1)」
今月号からカルマン フィルタとその周辺(統計学的検定・推定論なども含む)、および幅広い応用についての講座を開始する。
カルマン フィルタは、1960年、米国機械学会(ASME:American Society Mechanical Engineers)に発表された論文が出発点になっている。カルマンフィルタは、アポロ計画のための月面無人探索衛星(ルナ・オービター)の軌道決定に直ちに応用され、人類を初めて月面に到着させるというアポロ計画の偉業の一部を担い、大きなインパクトを与えた。
著者のルドルフ・カルマン(Rudolf Emil Kalman、1930年5月19日~2016年7月2日、享年 86歳)はハンガリー系(ブダペストで誕生)アメリカ人であり、1953年、1954年、マサチューセッツ工科大学(MIT)にて電気工学の学士号、修士号を取得。1957年、コロンビア大学にて博士号(Ph.D)を取得。「信号の推定と予測問題」をテーマにした、原論文は、電気工学系(たとえばIEEE:Institute of Electrical and Electronic Engineers)の論文誌ではなく、機械工学系である、米国機械学会(ASME:American Society of Mechanical Engineers)に掲載された(末尾の「コラム 1.1」を参照)。
本稿は連載講座の最初ではあるが、まず理解の対象となる、カルマンフィルタとは何かについて、証明・導出なしで示し、今後、このカルマンフィルタの数式の意味の理解と、その導出を当面の目標とする。その目標のため、関連する確率統計(特に統計学的検定・推定論)、線形代数学、システム論などの基礎については、引き続く連載講座で、なるべく平易に順次、解説する予定である。また、カルマンフィルタの主な目的の1つは、確率制御系の設計問題であり、特に制御理論では最も汎用性・適用性が高い、正規性雑音の混入する、線形系に対する2次形式の評価規範のもとでの設計問題:線形2次ガウシアン(LQG Problem:Linear Quadratic Gaussian Problem)の設計問題についても解説する。
立命館大学 名誉教授
杉本末雄
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