人獣共通感染症

4,620 (税込)

「人獣共通感染症」にはヒトと動物の双方に病気を起こすもの、ヒトには重篤な病気を起こすにもかかわらず動物には無症状で感染源としてのみ重要な役割を果たすものなどがあり、それらをあわせて「人獣共通感染症」としました。主に獣医学の視点から疾病の特徴、ヒトと動物の関わり、疫学的事項などを中心に解説。

本書は、『畜産の研究 58巻1号(養賢堂発行)』での特集記事「人獣共通感染症」を加筆・修正するとともに、いくつかの新たな項目を加え取りまとめ、単行本化したものです。

在庫あり

判型 B5判
第1版
ページ数 272
発行日 2007/10/31
ISBN-13 978-4-8425-0428-5 C3061
ISBN-10 4-8425-0428-5
JAN 1923061042002
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目次

第1章 人獣共通感染症の概念と展望
 1.人類の歴史と動物由来ウイルス
 2.人獣共通感染症の概念
 3.人獣共通感染症の種類
 4.エマージング感染症としての人獣共通感染症
 5.エマージング感染症の出現の背景
 6.マイクロビオーム
 7.種の壁を越えるウイルスの適応
 8.野生動物由来の未知のウイルス

第2章 野生動物由来感染症対策
 1.はじめに
 2.世界の野生動物由来感染症とその対策
 3.わが国の輸入動物の現状とニアミス例
 4.わが国の輸入動物対策-経緯
 5.感染症法の見直し-動物由来感染症の対策強化-
 6.狂犬病予防法における輸入検疫制度の見直し
  (1)システムの変更
  (2)事前届出
  (3)係留場所
  (4)係留期間
  (5)実験用動物
  (6)イヌ以外の対象動物
 7.おわりに

第3章 重篤な人獣共通ウイルス感染症対策
 1.はじめに
 2.新興・再興感染症としての側面
 3.動物の輸入規制と法的対策
 4.感染症サーベイランス
 5.国際協力
 6.診断体制の確立
 7.バイオテロ対策

第4章 牛海綿状脳症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)BSEの発生
  (2)ウシ以外の種への伝播
  (3)BSEプリオンの起源
  (4)BSE感染牛の体内プリオン分布
 3.診断(症状・診断方法)
  (1)臨床診断
  (2)病理学組織学検査およびIHCによるPrPScの検出
  (3)免疫生化学検査
  (4)バイオアッセイ
 4.予防・対策
 5.その他

第5章 鳥インフルエンザ
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
  (2)AIVの生態
  (3)H5N1亜型による高病原性鳥インフルエンザの発生
 3.診断
  (1)病原学的診断
  (2)血清学的診断
  (3)病原性診断
 4.治療
 5.予防・対策
  (1)鳥類における予防・対策
  (2)ヒトへの感染予防

第6章 E型肝炎
 1.はじめに
 2.疫学と臨床症状
 3.病原体
 4.診断
 5.日本で確認されたHEVの感染ルート
 6.ブタや他の動物でのHEV感染
 7.動物からヒトへのHEVの伝播
 8.治療・予防対策

第7章 日本脳炎
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
  (1)臨床症状と病変
  (2)実験室内診断
 4.治療
 5.予防と対策
 6.その他

第8章 狂犬病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)生態
  (2)感染経路
  (3)原因
 3.診断
  (1)症状
  (2)病理
  (3)病原・血清
 4.治療
 5.予防・対策

第9章 ウエストナイルウイルス感染症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)WNV感染における蚊と野鳥の役割
  (2)WNVの特徴と伝播様式
  (3)北米および中米における流行の現状
  (4)世界におけるWNVの流行と疫学
  (5)オセアニア、東南アジア地域におけるフラビウイルス属の疫学
  (6)WNV遺伝子と分子系統樹解析
  (7)各種動物におけるWNV感染
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
 4.予防・対策
  (1)予防
  (2)農水省におけるWNV感染症の対策
  (3)ワクチン
 5.その他、今後の展望と課題

第10章 ヘンドラウイルスとニパウイルス感染症
 1.はじめに
 2.ヘンドラウイルス感染症
  (1)発生経緯
  (2)症状
  (3)伝播
 3.ニパウイルス感染症
  (1)発生経緯
  (2)症状
  (3)伝播
 4.病原体
 5.治療
 6.診断体制および対策
 7.おわりに

第11章 腎症候性出血熱
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
 4.治療
 5.予防方法
 6.おわりに

第12章 牛痘と偽牛痘、伝染性膿疱性皮膚炎
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
 4.治療
 5.予防・対策
 6.その他

第13章 エボラ出血熱とマールブルグ病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
  (2)感染経路
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
 4.治療と予防
 5.法規関連

第14章 ラッサ熱
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)感染経路
  (2)病因
 3.診断
  (1)症状
 4.病理
 5 診断方法
 6.治療と予防
 7.関連法規

第15章 Bウイルス感染症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
 4.治療
 5.予防・対策

第16章 ボルナ病ウイルス感染症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)動物でのBDV自然感染
  (2)ヒトにおけるBDV感染
  (3)実験動物での病原性
  (4)BDVの中枢神経傷害性機序
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断
 4.治療
 5.おわりに

第17章 炭疽
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
  (1)動物の感染症
  (2)ヒトの感染症
 4.予防・対策・治療

第18章 豚丹毒
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)豚丹毒菌の分類
  (2)分布および動物からの分離
  (3)感染経路
  (4)菌の病原因子
  (5)免疫
 3.診断
 4.治療・予防対策

第19章 リステリア症
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
 4.治療
 5.予防・対策
 6.その他

第20章 結核
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
 4.予防・対策
 5.その他

第21章 大腸菌感染症
 1.概念
 2.疫学
  (1)ウシ、ブタの大腸菌性下痢
  (2)ブタの浮腫病
  (3)ヒトの腸管出血性大腸菌感染症
 3.病因
  (1)下痢原性大腸菌
  (2)腸管毒血症性大腸菌(ETEEC)
 4.診断
  (1)ウシ、ブタの大腸菌性下痢
  (2)ブタの浮腫病
  (3)ヒトの腸管出血性大腸菌感染症
 5.治療
  (1)ウシ、ブタの大腸菌性下痢
  (2)ブタの浮腫病
  (3)ヒトの腸管出血性大腸菌感染症
 6.予防・対策
  (1)ウシ、ブタの大腸菌性下痢
  (2)ブタの浮腫病
  (3)ヒトの腸管出血性大腸菌感染症

第22章 サルモネラ症
 1.はじめに
 2.SE
  (1)SEの疫学
  (2)各国におけるSEの疫学
 3.診断
  (1)症状、病変
  (2)介卵感染性
  (3)診断
  (4)感染に及ぼすストレスの影響
 4.治療
 5.予防・対策
  (1)WHOの勧告
  (2)英国の対策
  (3)米国の対策
  (4)日本の対策
  (5)具体的な対策
 6.まとめ

第23章 エルシニア症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病原体
  (2)ヒトでの発生状況
  (3)保菌動物
  (4)感染経路
 3.診断
  (1)臨床症状
  (2)診断
 4.治療
 5.予防・対策

第24章 野兎病
 1.はじめに
 2.疫学
 3.診断
 4.治療
 5.予防・対策

第25章 ブルセラ病
 1.はじめに
  (1)概念
  (2)経緯
 2.疫学
  (1)生態
  (2)感染経路
  (3)病因
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
  (3)抗体検査法
  (4)菌の分離同定法
  (5)同定
 4.治療
 5.予防・対策
 6.その他

第26章 カンピロバクター病
 1.はじめに
  (1)概念
  (2)経緯
 2.疫学
  (1)生態
  (2)感染経路
  (3)病因
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
 4.治療
 5.予防・対策
 6.その他

第27章 Q熱(コクシエラ症)
 1.はじめに
 2.病原体と宿主域
 3.ヒトQ熱の病態
 4.世界におけるヒトのQ熱
 5.日本におけるヒトのQ熱
 6.動物のコクシエラ症
 7.日本における動物のコクシエラ症
 8.本菌の新しい性状
 9.診断
 10.治療
 11.今後の課題
 12.おわりに

第28章 オウム病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
  (2)生態
  (3)感染経路
 3.診断
  (1)鳥類のクラミジア感染症の症状
  (2)ヒトのオウム病の症状
  (3)鳥類のオウム病の診断
  (4)ヒトのオウム病の診断
 4.治療
 5.予防・対策

第29章 レプトスピラ症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)生態
  (2)病因
 3.診断法
  (1)症状
  (2)診断法
 4.治療
 5.予防・対策

第30章 猫ひっかき病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)発生状況
  (2)病原巣とベクター
  (3)ネコのBartonella感染率
  (4)病原体
 3.診断
  (1)ヒトの臨床症状
  (2)動物の臨床症状
  (3)診断法
 4.治療
 5.予防・対策

第31章 ライム病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)生態
  (2)感染経路
  (3)病因
 3.診断
 4.治療
 5.予防と対策
 6.その他

第32章 回虫の幼虫移行症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)発育環
  (2)ヒトおよび非固有宿主での発育環
  (3)ヒトの回虫幼虫移行症の疫学
 3.診断
  (1)内臓移行型
  (2)眼球移行型
  (3)中枢神経移行型
  (4)診断法
 4.治療
 5.予防・対策

第33章 肝蛭症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)生態
  (2)感染経路
  (3)病因
  (4)ヒトの疫学
  (5)動物の疫学
 3.診断
  (1)ヒトの診断
  (2)動物の診断
 4.治療
  (1)ヒトの治療
  (2)動物の治療
 5.予防・対策
  (1)ヒトの予防
  (2)動物の予防
 6.その他

第34章 クリプトスポリジウム症
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
  (2)生態
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断法
 4.治療
 5.予防・対策
 6.その他

第35章 トキソプラズマ病
 1.はじめに
 2.疫学
  (1)病因
  (2)感染経路
  (3)生態
 3.診断
  (1)症状
  (2)診断
 4.治療
 5.予防・対策
36章 エキノコックス症
 1.はじめに
 2.疫学(生態、感染経路、病因)
 3.診断(症状・診断法)と治療
  (1)ヒトの診断と治療
  (2)動物の診断と治療(感染源となる終宿主:キツネ、イヌ、ネコ)
 4.予防・対策
 5.感染源対策の新しい展開
 6.おわりに

説明

ヒトは動物から多くの恩恵を受け、動物との関係なしでは生活できません。家畜は食肉や牛乳、卵など日々の生活に欠くことのできない良質な食品を生産し、伴侶動物はよきパートナーとして私達の生活を豊かにしてくれます。野生動物は同じ地球の一員として、私たちに大きな驚異と感動、ロマンを与えてくれる大切な存在となっています。しかし、ヒトと動物の間には共通の病原体が存在し、時に大きな危害を及ぼすことがあります。最近はそのような病原体による人獣共通感染症が多発する傾向にあり、今まで以上に社会の関心を集めるようになりました。とくに牛海綿状脳症(BSE)や腸管出血性大腸菌O157問題を契機として、消費者は安全な畜産食品を望むようになり、畜産食品を介した人獣共通感染症や食中毒の防除が重要課題となっています。また、最近は新興感染症と呼ばれる新しい疾病が多発していますが、興味深いことはそれらの多くが動物と密接に関係していることです。換言すれば、ほとんどの新興感染症は人獣共通感染症の性格を持っているといっても過言ではありません。たとえばBSEや腸管出血性大腸菌O157、クリプトスポリジウムとウシ、アメリカで大きな問題となっているウエストナイル脳炎と鳥類、ニパウイルスではブタとフルーツコウモリ、人免疫不全ウイルスやマールブルグ出血熱とサル、エボラ出血熱と未知の野生動物、インフルエンザではブタと渡り鳥、2002年末に世界を震撼させた重症急性呼吸症候群(SARS)とコウモリなど、その例は枚挙にいとまがありません。新興感染症発生の背景には病原体の変異に加え、地球の温暖化と気候変動、自然破壊と人間の活動範囲の拡大にともなう自然生態系の変化、家畜飼養形態の変化など様々なことが指摘されており、今後も多く新興感染症の発生することが予想されます。とくに自然破壊と生態系の変化にともない野生動物と接触する機会が増大し、野生動物との間で共生していた未知の病原体が人や家畜集団に侵入、新たな疾病を引きおこすことが懸念されます。また、最近は多くの国々で流行しているH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスから、ヒトに対する感染力を持った新型インフルエンザウイルスの出現が憂慮されるようになってきました。SARSの例を見るまでもなく、ひとたび新興感染症が発生すると、交通手段の発達にともなう人的交流と物流の増加、広域化、そして迅速化により、世界にまたたく間に広がり大きな脅威となることは想像に難くありません。伴侶動物を介した人獣共通感染症についても多くの問題があります。とくに最近の伴侶動物の範囲は従来の枠を越えており、それらを感染源とする未知の病原体による疾病の発生も危惧されます。

このように人獣共通感染症は身近に迫る問題であることから、発生の予測と予防、治療法などの開発が期待されています。しかし、その防除には難しい問題が多々あります。理由の一つは原因がウイルス、プリオン、細菌、原虫、寄生虫と多岐にわたることに加え、ヒトへの感染源となる動物が家畜から伴侶動物、野生動物まで多種類にのぼることです。日本脳炎のブタのように動物がレゼルボア(保毒動物)として重要な場合も少なくありません。また、ヒトへの感染経路も畜産食品を介した経口感染、感染動物や汚染環境との接触感染、咬傷や創傷感染、吸血昆虫による感染など、様々なことも防除法の開発を困難にする原因となっています。このような隘路を打開するためには、医学や獣医学ばかりでなく、疫学、医動物学、動物生態学、畜産学、食品衛生学など、多くの関連領域・分野の役割分担と連携協力を欠かすことができません。とくに従来の研究は病原体の性状や感染と病態解析などを中心に行われてきたこと、野生動物に由来する人獣共通感染症が増加しつつあることなどから、これからは今まで以上に病原体と宿主動物双方の生態学的研究、自然宿主と病原体の相互作用、感染リスク要因の解析、自然生態系と生物の多様性の保全など、感染源と感染経路に関わる研究が重要になると思います。また、世界の各地には未知の人獣共通感染症病原体がまだまだ多数存在すると推定されますから、診断技術の高度化とサーベイランスシステムの構築、国際協調と技術協力の推進、情報の収集と処理のあり方などについても積極的な検討が必要です。

養賢堂では2004年の「畜産の研究」第58巻1号で「人獣共通感染症」を特集し、代表的な人獣共通感染症について、主に獣医学の視点から疾病の特徴、ヒトと動物の関わり、疫学的事項などを中心に解説しました。この特集号は獣医学以外の分野、関係者からも高い評価を受け、多くの人々より単行本としてまとめてほしいとの希望が寄せられました。

本書は同特集の記事を加筆修正するとともに、いくつかの新たな項目を加えて取りまとめたものです。なお、人獣共通感染症にはヒトと動物の双方に病気を起すもの、ヒトには重篤な病気を起こすにもかかわらず、動物は無症状で感染源としてのみ重要な役割を果たすものなどがあります。本書ではそれらをあわせて人獣共通感染症としました。

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