説明
昨今は、模型飛行機といえば無線操縦のR/C機(Radio controlled model aircrafts)を指すほどにR/C機が普及している。その製作法や操縦法についてのガイドブックや雑誌、カタログなどは多数出版されており、また多種多様の組立て機材や関連するR/C機器も豊富に市販されている。ところが一方、模型飛行機の原点ともいうべき自由飛行の模型飛行機、すなわちF/F機(Free flight model aircrafts)になると、著書や雑誌の記事も極端に少なく、模型店やスーパーの片隅にライトプレンか、それに類する機材が置かれている程度である。これも時代の流れで、模型マニアの好みの問題と片付けてしまえばそれまでだが、模型飛行機の調和ある普及という視点からすると若干の疑問が残る。何故ならR/C機は、決してF/F機の延長線にあるわけではなく、両者は全く異なった性格を持つものだからである。つまり、F/F機が原則として滞空時間を競うのに対して、R/C機は高等飛行(Aerobatics)の操縦技術や実用機との相似の度合(スケール性)などを追究するものである。したがって、設計や製作、競技についての興味の在り方、重点の置き方は両者で自ずと異なっているといってよい。自由飛行の模型飛行機は、文字どおり自由に飛ばすので、良好な安定性が求められるほか、その中核を占めるゴム動力機は、滞空中の駆動トルクの変化とプロペラの適合性、緩上昇と急上昇の利害、得失など、理論的にも技術的にもかなり高度のものを含んでおり、奥深い興味を引くものである。著者が本書の執筆を思い立った第一の動機はそこにある。
一口に模型飛行機といっても実際に空を飛ぶのであるから、飛行原理そのものは実用機のそれと何ら異なるものではない。しかし、多くの模型マニアが一度は経験することであるが、低翼単葉の実用機と同じ形態で、ただ寸法だけを縮小した、いわゆるスケール機(Flying scale models)を作った場合に、それが快翔するであろうか?自由飛行形式では、例外を除いて飛ばないという方が正しい。それは、実用機の場合、操縦者や自動操縦装置が絶えず飛行姿勢を適正に保っているのに対して、自由飛行の模型飛行機にはそのような機能はなく、機体が高度の安定性を持つものでなければならず、低翼単葉のスケール機では、そのような条件を満たすのが無理なためである。また、模型飛行機は寸法が小さく、速度も低いので、飛行状態は実用機とかなり違っており(例えば、レイノルズ数が極端に低い)、そのことが性能や安定に及ぼす影響も無視できない。要するに、模型にはそれなりの特徴があるのであって、そのことをよく踏まえておかないと失敗することも多い。ただし、基礎原理は実用機と変わらないので、よく飛ぶ模型飛行機を作るためには、少なくとも初歩的な航空力学や材料強度学の知識は必要である。そして、それを基礎にして自身で創意、工夫しながら設計、製作することが進歩につながり、模型飛行機製作の意義を倍加させることになると思う。そのような観点から、本書では模型飛行機独特のノウハウについて述べると同時に、ホワイ(何故か?)に力点を置いて基礎原理をわかりやすく解説し、設計上の要点や製作上の注意事項について言及する。そして、繁雑な数式は極力避け、物理的な説明に重点を置くと同時に、多くの具体的な例題によって理解が深まるように工夫した。
レビュー
レビューはまだありません。