説明
窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等に代表されるセラミックスは、鋼の約1.5倍以上の硬さと剛性を有する。酸やアルカリに対する耐食性も鋼に比べ遥かに優れている。一方で窒化ケイ素、炭化ケイ素、アルミナ等の比重は鋼の約半分である。その結果、これらのセラミックスで作られた軸受、シール、バルブ、工具等は鋼等の合金で作られた場合よりも高い剛性や耐摩耗性を示し、腐食性の液中や砂等の硬い微粒子を含む水中での軸受やシール、バルブ等の使用や、金属の無潤滑切削を可能にしている。セラミックスの小さな比重と高融点はこれらの摩擦部品を鋼の場合よりも高速高温の環境で用いることも可能にしている。 一方でセラミックスの高剛性と高硬度は、金属用に開発された潤滑油よりも遥かに低い粘度の水による潤滑を可能にしている。これはセラミックスの摩擦面が金属よりも滑らかになりやすく、低粘性の潤滑膜を保持する能力に優れていることによる。油中や水中における摩擦面の耐焼付き荷重は、セラミックスと金属の摩擦面が、セラミックス同士あるいは金属同士の摩擦面より遥かに大きな値となる。セラミックスをバルク材として要素部品全体に用いることが許容されない場合には、要素部品の摩擦面にだけセラミックスをコートしてセラミックスの優れた摩擦摩耗特性を利用することができる。アルミナのコートやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)のコート等が優れた耐摩耗性や低摩擦を示し、広く用いられている。 セラミックスのこれらの優れた摩擦特性と耐摩耗性および潤滑特性(トライボロジー特性と総称される)は最近の約20年間で着実に確認されてきており、セラミックスの摩擦部品への応用例も数を増してきた。 本書はこのような現状の認識のもとに、日本トライボロジー学会に所属する「セラミックスのトライボロジー研究会」の会員を中心として執筆されたものである。引用されている多くのデータや事例は、当研究会の1989年~2002年の活動の中で紹介され議論されたものであり、それらを基礎編と応用編に分けてまとめてある。応用編にはできるだけ最新かつ多くの事例を紹介する努力がなされている。(序文抜粋)
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