説明
経済学では伝統的に「土地・労働・資本」を生産の三要素としてきたが、この三つの要素面からみると、農業問題を農地問題・農業者問題・農業資本問題の三大領域に分けることができる。本書の主題「農業における資本問題」は、広く農業問題の一領域である「農業資本問題」として位置づけることができる。「農業資本問題」にかかわる問題領域は広大かつ多岐にわたると考えられるが、本書では、「農業投資問題」をその中心に据え、それにかかわる「農業資金問題(農業経営金融・農業負債・農業財政・農業政策金融・JA金融などの問題)」を周辺に配置することによって問題領域を限定し、それらの基本的問題を考察している。 まず、ミクロ経済的視点から1章および2章で、農業経営成長・発展と投資・金融・リスク・負債に関する一連の「農業経営資本問題」が考察され、「農業資本管理問題」に論及する。次に、マクロ経済的視点から、第一に、第二次大戦後の農業私的投資・農業公共投資のマクロ長期統計分析により3章が検証され、第二に、農業資本形成の一大構成要素である農業公共投資をとりあげ、4章として、農業公共投資の財政・経済的フレームの理論化を図るとともに、その社会経済的効果について理論的考察を加え、あわせて、現代の農業公共投資改革課題について論究する。つづいて第三に、農業資本形成のもう一つの構成要素である農業政策金融をとりあげ、5章として、その機能の経済理論的意義・制度的体系・資金形態を考察する。 さらに、主題と関連して、農業民間金融の雄ともいうべきJA系統金融をとりあげ6章にて考察される。 本書の問題領域、章別構成およびその概略は以上の通りであり、各章ともに独立論文的体裁をとっているが、内容的には、主題の「農業資本問題」と言う大問題領域のなかで各章は相互関連性をもち、一つの体系をなしている。 本書は、広範な伝統的かつ最新の農業経済学の業績を踏まえ、そのうえに展開されたものであり、現代を反映した新しい問題領域の開拓と問題発見に努めたものである。試練に直面している農政の理論的基礎として役立つことができるはずである。
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