説明
記事ピックアップ
巻頭記事「カルマン フィルタとその周辺および応用(本講座の今後の予定)」
以上で、カルマンフィルタの導出と応用に必要となる確率統計学の基礎について講述した。したがって、ただちに、カルマンフィルタの導出をおこなうことが可能な状況に達したので、次号からは、カルマンフィルタの導出に進路を向けることにする。
ところで、確率統計学は、工学、理学、また社会科学についても、重要な知見を与える学問である。この観点から推定理論についての基礎事項を講述した。しかし、常に統計学的 「推定と検定」といわれ、「推定」とのペアとなる「統計学的検定」の考え方は、われわれの日常行動に大変重要な指針を与える学問である。
本講座では「統計学的検定」については、カルマンフィルタの周辺として、再度機会を捉え、講述する予定である。
統計の見つめ方について、古い時代(私の学生時代)に、「統計でウソをつく法」(How to Lie with Statistics, by Darrell Huff, 1954)という書物が話題になったことがあり、さまざまな形での、統計データを用いた「ウソ」が指摘されている。「ウソ」ではないが、現在でも、マスメディアで報道される「比率」に関する報道では、報道での「比率」を求めるために用いた、「サンプルサイズ」が付記されていないことが非常に多い。
このことは、本講座での「母比率」の「区間推定」、「信頼区間」(p.689–690)で示したように、「サンプルサイズ」は、報道された「母比率」がどの程度、信頼できるかどうかを計算するための重要な数値であるが、これを重視しない、報道の風潮は憂慮すべきことである。これらの風潮(認識)は、理系・文系に関わらず「統計学」の基礎を学んでおくことが大変重要であることを示唆している。
立命館大学 名誉教授
杉本末雄
レビュー
レビューはまだありません。