説明
記事ピックアップ
「構造解析における不確定性と荷重の推定(1)」
構造物の疲労破壊は特に産業革命以降大きな問題として認識され、研究されてきた。現代でも疲労破壊を完全に防止する技術は確立しておらず、事故も発生している。疲労破壊に限らず、破壊の予測を困難にする要因として、実際の構造物における材料特性や寸法の不確定性、残留応力など製造プロセスに起因する不確定性、さらに、稼働中の環境や各種荷重の予測が難しいことがあげられる。これは破壊そのもののメカニズムの理解とは別の問題である。材料や構造の振動、変形や強度の研究では比較的規則的な負荷を用いた実験や解析がおこなわれる。これは研究対象とする現象や特性を抽出し、理解するために必要な手法といえる。疲労など耐久性を調べる試験では限られた期間で結果を得るために加速試験もおこなわれる。
しかしながら、現実には荷重発生要因は多様であり、実験で用いられるものよりも複雑である。また、設計・開発時には運用条件を模擬した試験や解析がおこなわれるが、材料特性、製造、運用条件や環境には不確定性も含まれることから系の応答評価もそれを考慮することが望ましい。例えば、自動車や航空機などは、運用中に構造が受ける荷重は操縦や運動、路面や風(航空機の場合は特に突風)の状態によるものの、これらは事前に正確に予測することはできない。宇宙機では運用条件を地上試験で十分に模擬できず、解析による推定に頼らざるを得ない場合がある。例えば、宇宙空間から大気圏に突入する機体には空力加熱のために極めて高い耐熱性が求められるが、構造への熱荷重(加熱率)や、用いられる耐熱材や断熱材の物性の不確定性は大きい。
そこで著者らは、荷重(機械的、熱的)の不確定性の影響や、センサ情報から実働荷重を推定する技術の基礎的研究をおこなってきた。後述するように、系の不確定性を考察することはそこで起きている現象の理解を深めることにも通じる。本稿では著者らがおこなった解析や実験の概要を、確率論的構造解析や逆解析の基本を交えながら、2回にわけて紹介する。
宇宙航空研究開発機構 航空技術部門
中村俊哉
レビュー
レビューはまだありません。