説明
記事ピックアップ「打撃試験による鉄道車両の台車振動推定手法の検討」
鉄道車両の台車には種々の部品や機器が取り付けられている。これらの部品は、鉄道車両の走行中に厳しい振動環境にさらされており、その振動が原因と考えられる走行中の部品落下事故も度々発生している。このような事故では、落下部品や部品落下にともなうバラストの飛散などにより車両が損傷するだけでなく、最悪の場合、乗客の被害あるいは脱線事故などに繋がる恐れがある。そのため、取り付け部品の設計時には走行中の台車の振動レベルを考慮する必要がある。
台車に取り付けられた部品が受ける振動は、1つの指標として取り付け部の台車振動特性で評価できると考えられる。この台車振動特性は、例えば JIS 規格:JIS E 4031:2013(鉄道車両用品-振動及び衝撃試験方法)の振動試験および衝撃試験により類推することが可能であるが、車両毎あるいは走行線区や走行速度毎に振動特性は異なるため、個別の部品について詳細に検討することは困難である。現状では台車振動特性を得るため、実際の車両に加速度センサなどを取り付けて営業線での走行試験を実施したり、鉄道事業者や車両メーカーなどが保有する台車の模擬走行試験装置を用いて台車の走行状態を再現して測定したりすることもできるものの、いずれも多くの手間と時間がかかるという問題がある。その点、台車振動特性をより簡便な手法で予測できれば、台車部品の取り付けに関する設計条件に用いることができ、落下事故などの防止にもつながる。
これまでに筆者らは、走行時の台車振動特性を簡易に予測する手法として、定置における打撃試験と走行中の軸箱振動加速度より台車上の任意の位置における振動加速度のパワースペクトル密度(以下、振動加速度 PSD, Power Spectral Density とする)を推定する手法(以下、台車振動推定手法とする)を提案している。また、試験車両の低速走行において、この手法により得られた推定値と実測値を比較し、手法の妥当性を検証している。提案する台車振動推定手法を多種多様な台車に適用するためには、打撃試験条件の十分な検討により打撃試験方法を確立し、さらに車両を営業速度で走行させた際の検証を実施するなど、さまざまな課題に取り組む必要がある。
本記事では、加振手段やハンマチップ硬さ、輪軸支持の有無などの打撃試験条件の検討をおこない、提案する手法の有用性を確認したので紹介する。
鉄道総合技術研究所
小金井玲子
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