説明
生物資源を利用しながら人類の「食」を確保する生物生産の歴史のなかで、野生動物の飼育化と野生植物の栽培化で象徴される農業革命は、人類の生産力を飛躍的に増大させた。しかし同時に耕地開拓による森林伐採、そして河川氾濫さらに砂漠化の進行など、多くの人為的な環境変化を急速に出現させた。光合成で生産された植物は、動物に生体利用され生産物を産出する。動物は、生産活動後には遺体や残渣をマニュアとして転化してこれらを生産システムに組み込む。マニュアは地球環境の生態系に還元され、物質循環による再生産過程を形成している。動物の生産活動もまた自然循環を保持するために、耕種生産のなかに動物を参加させる「植物-動物-人間」の関係を持続させて生態系の均衡を保持させている。 人類による生物生産は次第に多様化し、人口増加に伴う増大する需要に対応して生物生産は様々な歪を生じるようになった。動物生産もまた工業的生産が一般的な形態になり、動物生体から産生されるマニュアを自然循環に組み込むことなく単なる産業廃棄物として処理している。この現状は我々の動物に関連した生産活動の規模が、動物環境の許容限界をはるかに超えてしまったことを意味している。しかし動物環境における許容限界の対処は、マニュア処理問題のみを見ても容量型と汚染型の両者を包含しており画一的な対処は不可能である。その解決には改めて動物と人間の関係を問いただす必要がある。 本書は、動物生産環境に関する国際シンポジウムや日本畜産環境研究集会などで公表された動物環境レメディエーションに関する論文集である。動物環境のレメディエーションの今日的課題として提起されている大要が理解されよう。
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