説明
本来,微積分学はニュートン力学から発したものである.機械工学や土木・建築工学は力学の応用分野である.このため,微積分の活用は工学を学ぶには必要不可欠である.そして,微積分学の最初の到達点が微分方程式である.また,微分方程式は力学に限らず,社会科学や心理学,情報伝達など様々な分野で応用されている.しかしながら,紙と鉛筆で解ける微分方程式は限られており,工学的応用を目指した結果を得るためには,数値解法に頼らざるを得ない.この数値解法に威力を発揮したのがコンピュータシミュレーション技術である.しかし,微分方程式を紙と鉛筆だけで解析的に解ければ,得られた解から物理や現象の本質を抽出することが可能となる.コンピュータシミュレーションや実験では,到底これに勝ることはできない.ここに微分方程式を学び,それを応用して現象を観察する意義がある.
本書は,工学系大学生の初年度教育の教材として利用されることを念頭に置いており,微分方程式とその力学解析への応用が主眼である.ほんの少しの微分方程式(工学系学生にとって必須)の解法を解説したのち,高校物理(力学)の例題を取り上げて微分方程式の観点から力学解析を完全に行うことを試みた.そして,数学と力学は相互に密接な関係にあることが理解されるのを期待している.本書中の様々な例題はすべて物理則,特にニュートンの運動則を適用して微分方程式を導出し,それを解いて所望の物理量の様相を知るようになっている.ここで,ぜひ気がついていただきたいのは,微分方程式を解くということは目標達成のための“過程に過ぎない”ことである.しかし,微分方程式が解けなければ何もできないのである.
本書の第4章以降は,すべて力学からの例題である.読者は自らの手と鉛筆ですべての式計算を行っていただき,読者自身が解いた実感を得ていただきたい.本書の繰り返えされた数式表示と計算過程の詳細はそのためにある.また可能ならば,MathematicaやGnuplotなどのソフトを使って,自らが得た結果をグラフに表して欲しい.
最後に,本書を学ぶ中から数学的手法で様々な分野の勉強を志す後継の世代が出現することを希望したい.
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