材料加工層

5,500 (税込)

本書では、機械加工の基礎としてまず加工層の問題をとりあげ、加工層の無い加工を行うにはまず加工層について徹底的研究が必要であることを述べ、さらに、原子精度の面加工の理論と実験により、超精密加工法の基本を確立した。これまでの研究の経緯と成果を集大成し解説。

在庫あり

カテゴリー: ,
著者:
判型 A5判
第1版
ページ数 335
発行日 2007/04/19
ISBN-13 978-4-8425-0418-6 C3053
ISBN-10 4-8425-0418-8
JAN 1923053050008
Yahoo!ショッピング でのお取り扱いについてはお問い合わせください。
Amazon紀伊國屋書店セブンネットショッピング
図書館: カーリル
※当サイトの書影データはご自由にお使いください。
書影のダウンロード: メイン画像

目次

第1章 加工層
 1.1 加工層の構成
 1.2 加工層の物理的・化学的特性(1.変形層:2.ベイルビイ層:3.化学反応層:4.物理吸着層:5.化学吸着層)

第2章 加工層の測定評価
 2.1 残留応力(1.多結晶:2.単結晶)
 2.2 硬さ(1.概要:2.ナノ押込み硬さ測定装置:3.マイクロ・ナノ押込み硬さ測定:4.層状材料の硬さ)
 2.3 組織

第3章 研削加工層の温度
 3.1 熱伝導方程式
 3.2 数値計算(1.差分法による熱伝導方程式の定式化:2.熱の配分割合:3.熱伝導解析のフローチャート)
 3.3 温度分布(1.表面創成理論:2.微小時間に断面を削り得る砥粒切れ刃最深通過点の存在範囲:3.熱源強度分布の推定:4.表面創成および熱源強度分布計算のフローチャート:5.シミュレーション結果)

第4章 研削加工層の残留応力
 4.1 有限要素法による数値計算(1.弾塑性問題の基礎方程式:2.有限要素法の基礎理論)
 4.2 研削抵抗による残留応力の計算(1.計算プログラム:2.数値解析結果と考察)
 4.3 研削抵抗と研削温度が同時作用したときの残留応力(1.解析理論:2.計算結果:3.実験結果と計算結果の比較)

第5章 切削加工層の残留応力
 5.1 切削過程への有限要素法適用の基礎
 5.2 有限要素法適用の仮定
 5.3 熱応力および残留応力の計算式
 5.4 解析結果ならびに考察(1.機械的効果によって生じる残留応力:2.熱応力によって生じる残留応力:3.熱応力と荷重が同時に作用した場合に生じる残留応力)

第6章 鋼の研削加工層の組織変化
 6.1 組織変化過程の解析
(1.熱伝導解析:2.炭素拡散および組織変化の解析:3.コンピュータシミュレーションシステム)
 6.2 亜共析鋼の加工層組織の計算結果
(1.温度分布:2.組織変化のシミュレーション)
 6.3 過共析鋼の加工層組織
(1.熱伝導解析:2.炭素拡散および組織変化の解析:3.コンピュータシミュレーションシステム:4.シミュレーション)

第7章 研削白層
7.1 加工層の白層
7.2 白層の生成条件
7.3 研削熱量と研削温度の効果
7.4 白層の組織と成分(1.白層の組織:2.白層の組成分析)

第8章 研削き裂
8.1 研削き裂について
8.2 マルテンサイトの研削き裂起源
(1.原子オーダから見た研削き裂起源:2.0.2~1.8%C鋼マルテンサイト結晶の研削き裂起源:3.マルテンサイト晶およびα’-γ相界面の衝突き裂:4.マルテンサイト晶の衝突き裂の密度)
8.3 マルテンサイト晶の衝突き裂と研削き裂
8.4 研削き裂の生成機構(1.0.2~1.8%C鋼の研削き裂生成現象の整理:2.研削条件と研削き裂:3.研削き裂の生成要因)

第9章 αFe-Fe3C合金の研削加工層
9.1 はじめに
9.2 Fe3C相残留応力測定装置の試作
9.3 Fe3C層による加工層の残留応力
9.4 Fe3C相の形状、大きさおよびαFe相の結晶粒径による残留応力
(1.Fe3C量による加工層の硬さおよび組織と被削性因子:2.Fe3C量による研削切りくずと加工層の残留応力:3.研削回数との関係)
9.5 αFe-Fe3C2相合金の残留応力分布

第10章 超高速加工層
 10.1 はじめに
 10.2 超高速切削による加工層生成の基本理念
 10.3 超高速切削装置の製作
 10.4 超高速切削加工層(1.加工層の残留応力:2.加工層の硬さ:3.加工層組織の塑性流動:4.ロケット方式による超高速切削)
 10.5 超塑性波伝播領域と加工層
 10.6 生産ラインにおける超高速加工層の評価
 10.7 塑性伝播速度以上の加工層のシミュレーション

第11章 原子面創成加工層の分子動力学シミュレーション
 11.1 ナノトライボロジーを例とした分子動力学の説明
 11.2 ポテンシャルと分子動力学法(1.原子間ポテンシャル:2.分子動力学法)
 11.3 シミュレーション方法(1.シミュレーションモデルの概要:2.原子間ポテンシャルと原子間力:3.試料の原子配列と移動:4.試料原子の温度制御:5.試料原子のひずみエネルギー評価:6.計算アルゴリズムと装置環境)
 11.4 単結晶ダイヤモンド砥粒による銅単結晶の研削シミュレーション(1.はじめに:2.シミュレーションの結果)

第12章 加工層なし加工機械設計開発の基本原理
 12.1 材料除去メカニズム(1.セラミックスと金属:2.脆性材料と研削:3.セラミックスの延性モード発現のその場観察:4.脆性モード引っかき:5.延性モードのその場観察:6.セラミックスの延性モード研削加工:7.セラミックスの延性研削加工機械)
 12.2 Si材料特性と研削加工(1.Si材料特性:2.Ra≦1nm領域における研削加工)
 12.3 ハイブリッド送り機構による研削・ポリシング統合加工構想

第13章 単結晶Siの加工層なし加工
 13.1 はじめに
 13.2 加工層なしの基本原理
 13.3 超精密工作機械(1.中核技術〔1〕―ハイブリッド加工機構:2.中核技術〔2〕―超精密位置決め・アライメント機構:3.中核技術〔3〕―加工液循環・ろ過装置:4.超加工機械による加工表面の評価結果)
 13.4 A-CMGによる加工層なし加工(1.A-CMG砥石の開発:2.A-CMGの加工層:3.単結晶Siウェハの加工層なしの検証)
 13.5 CMPとA-CMG加工層の評価(1.供試Siウェハの仕様および加工条件:2.表面加工品位の評価:3. 亜表面の加工品質の評価:4.弾性モード加工によるSiウェハの加工層なし加工機構:5. Si加工層なしの加工原理)
 13.6 大口径Siウェハの加工層なしの一貫融合加工システム

索引
本著全体に参考となった文献
あとがき

説明

学生時代に、水力学、流体力学、ロケット工学に関する講義を受け、物体の周りに粘性による流体摩擦を起こし、境界層が生まれ、層流、遷移流れ、乱流の流れを持つことを聞き、深い感銘を受けた。それも、流体(連続体)の任意の点における速度と圧力による、Navier-Storkesの運動方程式によって導くことができる、実に美しい方程式の発明があることに、さらに感動した。境界層(速度境界層)という概念は20世紀の初めにルートビッヒ・プラントルの境界層理論、およびカルマン、Taylorらによる貢献が大きい。この考えは、平板表面の温度分布、つまりLorenzの発明した温度境界層とともに空気力学の大きな業績である。

物体周りの流れは、粘性の影響を受け、速度勾配は非常に大きく、摩擦応力が大きく作用する。この速度勾配がなくなるまでの距離が、境界層と呼ばれる。

著者はこのような事実は、工具を用いた除去加工にも同じように速度と温度の境界層が現れるだろうと勝手に想像したのが、この加工変質層の研究に強い関心を持った動機である。

加工変質層の科学的研究は、G. Beilbyに始まると考えられている。氏の提唱する加工面のamorphous説は20世紀の初めに完成されいる。加工層研究は、レントゲンが陰極線と全く性質の異なる放射線の発見、つまり、このX線が大きな役割を果たしている。X線は、 M. Laue、 M. Friedrich、 P. Knippingらによって波動回折が明らかとなり、次にW.H. BraggとW.L. Braggは結晶格子面のみで入射X線が回折するというブラッグの回折条件式を導いた。

さらに、G. Sachs、J. WeertsはX線による応力の測定の可能性を明らかにし、G. Glocker、E. Osswaldはついに応力の測定を実証した。その後、 X線応力測定はドイツを中心に、米国、日本が活発に研究を進めた。特に日本においては、松永らが加工変質層の研究会をつくり、主に半導体材料領域の研究を行った。また、 X線応力は仁田、高村、小島、平らが行った。金属材料の加工層は、1970年代まで多くの研究者によって進められ、米谷によってほぼまとめられたが、唯一残った問題が加工層の残留応力と組織変化の理論的解析、ならびに夢としての加工層なしの技術大成であった。O.C. Zienkiwiczにより有限要素法FEMが開発され、弾塑性力学によるシミュレーションが可能となった。その結果、切削についての残留応力を垣野が、また研削については筆者が理論的解析に成功している。その後、大村は溶接における加工層組織の理論解を研削加工層に適用し、筆者の実験結果を検証し、時系列的に組織変化をシミュレーションし、よい一致を示している。さらに、加工層の酸化膜、白層、き裂発生メカニズムや検出方法なども明らかにされ、加工層問題に対する実験や理論的検証は、ほぼまとめられたといえよう。

そして、この道に入った当初から夢に描いていた加工層なしの加工技術が、還暦を越えた年に、幸運にも、加工表面から材料内部の原子格子構造のままに、しかも残留応力がほぼ0、組織変化のない、つまり加工層がない除去加工技術を1台の機械によって、300Siウェハにおいて達成することができた。これは、神様の著書に書いてある真理の贈りかもしれない。

以上、加工層について歴史的背景を述べてきた。著者自身浅学非才の身でありながら、このような大層なテーマをまとめた理由は、誰かがいずれはまとめるだろう。しかし学問の道に進んだ一人として、できる限りのことを何らかの形で示して、偉大な先達やお世話頂いた恩人にお礼をしたいと思ったのが、そもそもの動機である。

(序文より抜粋)

レビュー

レビューはまだありません。

“材料加工層” の口コミを投稿します

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です