弾性数理解析とその応用

9,428 (税込)

本書は、日本機械学会に所属した数理固体力学研究者が師から受け継ぎ発展させてきた数理解析技術のノウハウを未来へと続く若い研究者に遺産として遺すことを目的に、現在も第一線で活躍されている14名の固体力学研究者に執筆して頂いた。各執筆者固有の解析技術を若い研究者達が理解できるように、研究論文では触れられない細やかなノウハウを丁寧に記述した。 関連する企業の技術者および大学の若い研究者が数理固体力学に対する関心と研究への更なる発展の想いが込められている。

在庫あり

判型 B5判
第1版
ページ数 333
発行日 2007/02/28
ISBN-13 978-4-8425-0417-9 C3053
ISBN-10 4-8425-0417-x
JAN 1923053085710
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図書館: カーリル
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目次

第1章 線形弾性学の基礎方程式と基本解
(1.1 はじめに:1.2 均質等方性弾性体の基礎方程式:1.3 動弾性問題のポテンシャル解法:1.4 静弾性問題のポテンシャル解:1.5 偏微分方程式の解法:1.6 積分変換法と超関数:1.7 弾性基本解:1.8 おわりに:参考文献)

第2章 弾性グリーン関数と物体力分布法
(2.1 弾性問題の解法と基本解:2.2 グリーン関数:2.3 物体力分布法:2.4 基本解およびグリーン関数のその他の応用:2.5 おわりに:参考文献)

第3章 複素変数法による2次元弾性問題の解法
(3.1 はじめに:3.2 複素関数による基礎式:3.4 有理写像関数の作り方:3.5 混合境界値問題の解法:3.6 おわりに:付録:参考文献)

第4章 シュミット法によるき裂問題の解法
(4.1 き裂と材料の破断:4.2 安全なき裂・危険なき裂:4.3 応力式と変位式:4.4 フーリエ変換:4.5 き裂問題の解析:4.6 おわりに:参考文献)

第5章 異方性弾性体としての圧電材料と構造スマート化
(5.1 はじめに:5.2 横等方性体の熱伝導方程式:5.3 横等方性体の基礎式とポテンシャル関数法:5.4 圧電材料の基礎式とポテンシャル関数法:5.5 二層複合平板のスマート問題:5.6 おわりに:参考文献)

第6章 流体を含む多孔質弾性体の力学とその応用
(:6.1 はじめに:6.2 流体を含む多孔質弾性体の力学(理論):6.3 流体を含む多孔質弾性体の力学の応用例:6.4 おわりに:参考文献)

第7章 貫通き裂を有する圧電セラミックス帯板の電気弾性解析
(7.1 はじめに:7.2 問題の設定および基礎式:7.3 圧電セラミックス帯板の変位成分と静電ポテンシャル:7.4 圧電セラミックス帯板の電界・応力・電束密度成分:7.5 解析:7.6 未知関数間の関係式:7.7 特異積分方程式:7.8 特異積分方程式の数値解析および応力拡大係数:7.9 数値結果および考察:7.10 おわりに:参考文献)

第8章 傾斜機能材料の破壊力学
(8.1 はじめに:8.2 傾斜機能材料の基礎式:8.3 傾斜機能材料の平面問題:8.4 傾斜機能材料のき裂先端の特異性:8.5 物性値が一変数の関数である場合の平面問題の解法:8.6 ポテンシャル関数法による解析例:8.7 応力関数法によるき裂問題の解析:参考文献)

第9章 弾性波動の解析法と超音波材料評価への応用
(9.1 はじめに:9.2 弾性体を伝わる1次元波:9.3 波の伝播方向:9.4 調和波の反射と透過:9.5 界面を伝播する波:9.6 弾性単層を伝播する波:9.7 弾性積層材を伝播する波:9.8 応答の近似解法と実験検証:参考文献)

第10章 熱弾性解析のトライボロジーへの応用
(10.1 はじめに:10.2 基本的な熱弾性転がり接触モデルと熱応力解:10.3 摩擦熱を伴う熱弾性転がり接触による 2次元表面き裂の応力拡大係数:10.4 摩擦熱を伴う熱弾性転がり接触による 3次元表面き裂の応力拡大係数:10.5 3次元表面き裂の疲労進展挙動と疲労寿命の評価:10.6 2次元表面き裂の疲労進展経路とピッチングの生成および疲労寿命の評価:10.7 熱弾性転がり接触を受ける被覆材のトライボロジー問題:10.8 おわりに:参考文献)

第11章 特性曲線法による弾性衝撃波の解析法
(11.1 はじめに:11.2 1次元熱弾性波の基礎式:11.3 特性曲線および特性曲線方程式の誘導:11.4 特性曲線方程式の離散化と解析手順:11.5 多次元熱弾性波の基礎式:11.6 従特性曲線および従特性曲線方程式の誘導:11.7 数値解析のための差分方程式の誘導:11.8 おわりに:参考文献)

第12章 熱応力の焦点化現象とその応用
(12.1 はじめに:12.2 熱応力焦点化現象:12.3 中空球の熱衝撃:12.4 球の熱応力焦点化現象:12.5 ジルコニア粒子分散系複合材料に生ずる相変態応力と熱応力による焦点化現象:12.6 熱応力焦点化現象を用いた熱線レーザ検知装置への適用:12.7 おわりに:参考文献)

第13章 弾性力学と分子動力学法
(13.1 はじめに:13.2 分子動力学法の基礎理論:13.3 シミュレーション方法:13.4 原子間ポテンシャル:13.5 シミュレーション例:13.6 分子動力学法の問題点:13.7 最近の動向:参考文献)

説明

太平洋戦争が終結してから61年が経過した。本邦の固体力学研究者は不十分な研究環境の中にあっても全世界を舞台にその成果を示し、戦後復興の大きな後ろ盾となってきた。日本が最も得意とする「もの作り技術」の根幹は機械工学にあり、なかんずく材料の力学、すなわち固体力学がその中心を占めている。したがって物作り技術の発展に対する固体力学研究者や技術者の産業・工業界への貢献は計り知れない。

戦後60年間の研究活動には約三世代の流れがある。第一世代は産業技術の戦後復興に、第二世代は工業先進国への発展に、第三世代は世界をリードする技術立国としての発展に貢献した。この間、コンピューターと計測技術の発達により、固体力学の研究手法も大きく変化し、研究成果が技術開発とダイレクトに結びついてきた。CAD・CAMに始まり、有限要素法等のコンピューターシミュレーションが技術開発の現場で多用され、製品の開発スピードは飛躍的に増加した。現在では実物やミニモデル実験に代わり、シミュレーションによるバーチャル実験が技術開発の常套手段となっている。これを支えているのが固体力学である。

しかしながら、コンピューターシュミレーションの成否を握る鍵は適切な「工学現象の理解とモデル化」にある。このため、工学現象の基本物理を明確にすることは最も重要な研究課題である。加えて、固体力学の応用範囲がミクロからナノテクノロジーへ、また宇宙工学から生命科学にまで広がっており、過去には考えられなかったような広い応用分野が出現している。そして各応用分野固有の力学現象の解明とそのモデル化が喫緊の課題となっている。各応用分野の基本的工学現象を解明するには、基本物理をふまえた数理モデルから導き出された解析事実を応用展開することが技術開発のスタートであり、この理解無しには先端技術の開発もおぼつかない。これが数理固体力学研究者の主戦場である。

数理固体力学は材料・機械・建築・土木工学等、旧来の工学に限らず、生体・医用工学、地震学や地球科学等の広い応用分野を有し、線形・非線形、静的・動的、及び連成・非連成現象等、様々な現象に対応している。その応用の根幹となるのは「線形弾性力学」である。この弾性力学は応用の目的や現象に合わせて基礎微分方程式を解くことに帰着される。その美しくもエレガントな解析技術は多くの研究者を魅了し、ニュートン・コーシーから現代に至るまで連綿と続く学術史の中で蓄積されてきた。まさしく「人類の智慧の遺産」と呼ぶに相応しいものである。

本邦の数理固体力学研究の伝統も明治の文明開化から開始され、先達によってその解析技術が開発・蓄積されてきた。コンピューターによるシミュレーション技術が最盛期を迎えた現代にあっても、数理解析の重要性はいささかも損なわれない。返って、いまこそ数理解析研究の新たなる展開が必要とされているのも事実である。また、技術開発の現場では、固体力学的素養の薄い技術者がシミュレーション結果を盲信して、誤った設計を行う危険性が指摘されている。このため、固体力学、すなわち弾性力学教育の充実は技術現場の重要課題となっている。したがって、弾性力学研究の伝統とその重要性を後継の世代に遺すことは意義あるものと考える。

本書では、日本機械学会に所属した数理固体力学研究者が師から受け継ぎ発展させてきた数理解析技術のノウハウを未来へと続く若い研究者に遺産として遺すことを試みた。執筆陣は現在も第一線で国際的研究活動を行っている14名の固体力学研究者である。この執筆陣は数十年にわたり一途な研究活動を進め研鑚を続けてこられた、いわば「碩学」とも称される方々である。「遺産を遺そう」を合言葉に、各執筆者固有の解析技術を若い技術者や大学院修士課程初年度生が理解できるように、研究論文では触れられない細かなノウハウを丁寧に記述することを心掛けた。第1章から第3章までは、固体力学の根幹を為す「線形弾性力学」の基本解析法について説明し、第4章以降は各応用分野での解析技術のノウハウを記述している。各章は概ね独立しており、必要で興味のある章のみで理解が完結できるようになっている。また、より詳細な解析法や応用方法については各章末の文献を参照されることをお奨めする。

全編を通してご覧戴ければ、「弾性力学」の応用分野が機械工学に限定されない大きな世界であることを実感されるであろう。しかし、紙数制約のために充分な説明が為されない個所も多々存在する。そこで、この疑念や質問を執筆者に直接投げかけて戴き、より深い理解と研究のKnow-Howが獲得できるように各執筆者のEメールアドレスを末尾に列挙し、 自由に質問されることを期待している。そして本書が導入門となり、若い研究者が数理固体力学の遺産を受け継ぎ、固体力学研究をさらに発展・展開されることを念願している。

(序文より)

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