目次
展望・総説・総論
医療機器産業における機械工学の役割
日本医工ものづくりコモンズ 理事長
慶應義塾大学 名誉教授
谷下一夫
早稲田大学研究戦略センター 教授
重茂浩美
CubicDEL法の射影法の概要と2階微分の検証
慶応義塾大学 名誉教授
棚橋隆彦
複合材料の力学入門(16)
拓殖大学 名誉教授
笠野英秋
連載講座
生体機械工学(21)
せん断流れ場における血球破壊
工学院大学 工学部 機械工学科 名誉教授
橋本成広
ねじ締結の基礎(6)
ねじの締付け管理方法
名古屋工業大学 名誉教授
萩原正弥
機械構造用金属材料の超高サイクル疲労(66)
7. VHCF-5~VHCF-7の10年間の研究動向(19)
立命館大学 名誉教授
酒井達雄
カルマンフィルタとその周辺および応用(33)
非線形カルマンフィルタ(6)―Unscentedカルマンフィルタ(UKF)
岡山大学 大学院環境生命自然科学研究科 非常勤研究員
和田光代
立命館大学理工学部 名誉教授
杉本末雄
特別講座:機械系大学院入試問題演習
(62)「材料力学:神戸大学2024年夏季実施より」
神奈川大学 名誉教授
伊藤勝悦
一杯のコーヒーから(217)
本能の重要性
元 Consulting Prof., Stanford Univ
慶應義塾大学 (顧問)
福田収一
編集部だより
WordとPowerPointで書く数式
編集部
工学・工業界ニュース
説明
巻頭記事
医療機器産業における機械工学の役割
国内外の医療現場では、現在診断治療に関する種々さまざまな医療機器が活用されて、日常的な医療行為がおこなわれている。医療機器としては、鉗子やメスという鋼製小物といわれる器具類から、CTスキャンやMRI画像装置、さらには手術ロボットなど、技術面でも極めて広範囲になっており、総数で数十万点に至るといわれる。それら医療機器の開発、製造、販売などを含めた医療機器産業が形成されている。医療機器産業の世界市場は、経済産業省の報告書(医療機器産業ビジョン 2024)によると、2023年に売上高で約5,176億ドルであり、国別では米国が約47%、日本約5%を占めている。先進国の高齢化、新興国・途上国の人口増加と経済発展などにともない、2027年までに約6,543億ドルに成長すると予測されている。
国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が2023年に「新たな医療機器研究開発支援のあり方の検討に関する調査結果」を発表しており、今後成長が見込まれる医療機器の種別を予測するという大変興味深い結果が出されている。その報告書のなかで、今後日本が注力すべき製品分野別の成長予測に関しては、治療機器に加えて、疾患の治療・診断・予防に直接的に効果を発揮するソフトウェア機器〔プログラム医療機器:Software as a Medical Device(SaMD)〕やロボット手術などのコンピュータ支援機器が挙げられている。AMEDでは、世界市場の規模が大きくかつ成長率が高いという点で、日本が今後特に優先度高く注力すべき技術分野として、補聴器、治療用プログラム医療機器、AI活用プログラム医療機器を挙げている。つぎに優先度が中程度の製品として、コンタクトレンズ、体温計、酸素濃縮器、血管造影検査機器、手術ロボットを挙げている。
上記の治療機器は、主として物理的な介入Interventionが必要であるため、力学を基盤とする機械工学が主要な役割を演じることになるので、本稿では機械工学を基盤とする治療機器開発の現状と医療現場での応用例を紹介する。すでに、日本機械学会では、バイオエンジニアリング部門や医工テクノロジー推進会議などで、医療機器の研究開発に関して、活発に取り組んでおり、日本機械学会誌で小特集号「医療機器の新しい姿」が2015年に発刊されている。今後、さらに多くの機械工学の技術者や研究者が、医療機器分野すなわち医工連携に関心をもって頂き、日本から優れた医療機器が創出されるように願う次第である。
日本医工ものづくりコモンズ 理事長
慶應義塾大学 名誉教授
谷下一夫
早稲田大学研究戦略センター 教授
重茂浩美
レビュー
レビューはまだありません。