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「工学的アプローチによる生体組織構築」
2021年現在、新型コロナウイルス感染症は1年以上にわたって世界中に猛威を振るっており、間違いなく人類史に大きく爪痕を残す出来事となるだろう。
われわれ人類が未知のウイルスと対峙する際、最も重要であるといっても過言ではない技術は医療行為である。古くから、先人達が知識と経験を蓄積し、それを後代へと伝えることで、今日の医療技術は大きく発展を遂げている。いうまでもなく、これら医療技術のめざましい進歩は、医学や生物学の研究者による功績に因るものが大きいが、近年では医工連携という言葉が生まれたように工学的アプローチによる研究も注目を浴び始めている。
工学の人間がこのような医学・生物学の最先端研究を想起した場合、多くの人々は動物実験や臨床試験に代表される生体内(in vivo)環境での研究をイメージするだろう。
しかし最近では、倫理的側面やコストなどの理由から、生体外(invitro)環境下において生体組織を構築し、病理解明や薬効試験への使用、ひいては移植治療への応用などを目指す研究が盛んにおこなわれている。In vitroにおいてin vivo環境を精密に模倣するためには、温度や湿度、外部環境から加えられる刺激などを正確に再現することが求められる。
すなわち、in vivo主体の研究からin vitro主体の研究へとシフトしている現代においては、生体組織構築に対する工学的なアプローチはむしろ必須要綱となってくるのである。
このような、多くの人々にとってはまだ馴染みの薄いであろう「組織構築」×「機械工学」の研究について、本報では紹介する。
慶應義塾大学 理工学研究科
村松淳平
(教授)尾上弘晃
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