ナノ・マイクロスケール熱物性ハンドブック

13,200 (税込)

本ハンドブックは,日本熱物性学会創立30周年記念事業の一環として企画され,ナノ・マイクロスケールにおける輸送現象と熱物性に関して,基礎理論,測定とシミュレーションそして基盤データの最新情報をコンパクトに集約したものである.

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カテゴリー: ,
判型 B5判
第1版
ページ数 459
発行日 2014/06/25
ISBN-13 978-4-8425-0525-1 C3053
ISBN-10 4-8425-0525-7
JAN 1923053120008
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目次

A 基礎編
(FUNDAMENTALS)
第1章 イントロダクション
(Introduction)
1.ナノ・マイクロスケール熱物性の必要性
(Needs for Nano/Microscale Thermophysical Properties Research)
2.熱物性値のサイズ効果
(Size Effects of Thermophysical Properties)
3.本ハンドブックの構成と利用の手引き
(How to Use This Handbook)
第2章 ナノ・マイクロスケールの輸送現象の基礎
(Nano/Microscale Transport Phenomena)
1.電子輸送
(Electron Transport)
2.フォノン輸送(Phonon Transport)
付録
*格子振動の量子化について
*期待値[n]の計算
*内部エネルギーUの計算について
3.フォトン輸送
(Photon Transport)
付録
*マックスウェル方程式と境界条件
*電磁波の波動方程式
*ランバート則
*エネルギー密度とエネルギー束の関係式
4.物質・運動量輸送
(Mass・Momentum Transport)
5.近接場光とナノスケール電子・格子系との相互作用
(Near-Field Light Interaction with Nanoscale Electron and Phonon Systems)
6.マグノン・スピノン輸送
(Magnon・Spinon Transport)
第3章 物性値のサイズ効果
(Size Effects on Thermophysical Properties)
1.比熱のサイズ効果
(Size Effect in Specific Heat of Solid)
2.融点・表面張力のサイズ効果
(Size Effect in Melting Point and Surface Tension)
3.薄膜熱伝導率のサイズ効果
(Size Effects on Thermal Conductivity of a Thin Film)
付録
*フォノンの数値解析について
4.ナノ・マイクロ構造体のふく射物性のサイズ・構造効果
(Size Effect on Thermal Radiation from Nano and Microstructures)
5.粘性率,拡散係数のサイズ効果
(Scale Effect on Viscosity and Diffusion Coefficient)
6.液体のマイクロ・ナノスケールの熱物性値
(Liquid Interfaces)
B 測定・シミュレーション編
(MEASUREMENT TECHNIQUE AND MOLECULAR SIMULATOIN)
第4章 ナノ・マイクロスケールの熱物性値測定法
(Measurement Technique)
1.薄膜の熱伝導率・熱拡散率測定
(Thermal Conductivity and Thermal Diffusivity of Thin Films)
2.ナノチューブ・ナノファイバーの熱伝導率・熱拡散率測定法
(Thermal Conductivity and Thermal Diffusivity of Nano-Tubes and Fibers)
3.微量サンプル流体の熱伝導率・熱拡散率
(Thermal Conductivity and Thermal Diffusivity of Microscale Sample Liquid)
4.比熱測定
(Specific Heat Measurement)
5.ナノ・マイクロサンプルの密度測定法
(Density of Nano/Microscale Sample)
6.薄膜の熱膨張率
(Thermal Expansion of Thin Films)
7.ナノ・マイクロ系の表面張力測定法
(Surface Tension of Nano/Microscale Sample)
8.微量サンプルの粘性率測定法
(Viscosity of Microscale Sample)
9.微量サンプルの拡散係数測定法
(Diffusion Coefficient of Microscale Sample)
10.ナノ・マイクロ系のふく射性質測定法
(Radiative Properties of Nano/Microscale Sample)
11.ナノ・マイクロスケール熱物性センシング技術
(Thermophysical Properties Sensing Techniques)
12.生体中の結合水のナノスケール熱物性測定法
(Method of Measuring Nano Scale Thermoproperties of Bound Water in Biomaterials)
第5章 分子シミュレーションの利用
(Molecular Simulation)
1.分子シミュレーションと測定値の比較
(Data Comparison: Molecular Simulation and Experiment)
2.分子シミュレーションでしか得られないナノスケール熱物性
(Thermophysical Properties at Nanoscale Calculated by Molecular Simulation)
C データ編(DATA)
第6章 ナノ材料の熱物性
(Thremophysical Properties of Nanoscale Materials)
1.カーボン系材料
(Carbon-Based Materials)
2.半導体およびその周辺材料
(Semiconductor Thin Films and Related Materials)
3.金属薄膜
(Metallic Thin Films)
4.セラミックス
(Ceramics Thin Films)
5.ナノ構造表面のふく射性質
(Radiative Properties of Nano-Structured Materials)
6.ナノスケール界面熱抵抗
(Boundary Thermal Resistance at Nanoscale)
7.ナノ材料を含んだバルク物質の熱物性
(Bulk Thermophysical Properties Including Nanoscale Materials)
第7章 ナノ・マイクロスケールの熱物性標準とデータベース
(Data Bases)
1.薄膜の熱拡散率に関する標準物質
(Reference Material of Thin Film for Calibration of Thermal Diffusivity)
2.薄膜熱物性のデータベース
(Thermophysical Property Database for Thin Film)
3.薄膜熱物性測定法の規格
(Measurement Standard for Measurement Method of Thermal Diffusivity of Thin Films)
索 引・物質名索引

説明

ナノ・マイクロスケールの熱物性データは,多くの専門分野にわたる最先端研究開発に不可欠な基盤情報として,その重要性がますます高まっている.例えば,電気・電子分野では,半導体デバイス内部の微細領域における発熱密度増加の問題,ライフサイエンスではDNA等の拡散や分離問題,ナノ材料開発においてはナノワイヤやグラフェン等の革新的材料の熱伝導率の形状効果問題,またエネルギー・環境関連技術では,燃料電池用ポリマー薄膜内部の物質拡散問題等,多岐にわたる.

これらのナノ・マイクロシステムを工学的にデザインしその性能を的確に評価するためには,構成する物質の機械的性質,電気的性質,そして熱物性値が必須なのは言うまでもない.ところが,材料のサイズがナノ・マイクロスケールになってくると,その性質はバルクな(mm~mスケール)値とは大きく異なる場合がある.ナノ・マイクロスケール材料の熱物性値がバルクと違うのであれば,(1)なぜそうなるのか,(2)その違いをどのように検知するのか,(3)数値としてどれだけ異なるのか,を知ることは基盤学術およびナノ・マイクロシステムを設計するための基盤情報として重要であることは言うまでもない.さらに一歩踏み込んで,(4)ナノ・マイクロ材料の熱物性値の特異性を利用して,新たな機能を発現するナノ・マイクロシステムを開発することも,工学的な応用として期待されている.上記(1)~(4)に対する開発現場での潜在的ニーズは大きく,またこのような「熱物性値のサイズ効果」は,学術的にも近年概ね明らかになり実験データや理論解析もかなり蓄積されてきたが,これまでハンドブックのようなまとまった形で数値データ等を提供しているものはなかった.本ナノ・マイクロスケールハンドブック(Nano/Microscale Thermophysical Properties Handbook: NM-TPH)はこのようなニーズに応えるべく,ナノ・マイクロスケールにおける輸送現象と熱物性に関して,基礎理論,測定とシミュレーションそして基盤データの最新情報をコンパクトに集約したものである.

NM-TPHは機械,電気・電子,化学,物理分野などの研究者および大学院生レベルを対象読者として想定しており,構成とその意図は以下のようになっている.

A 基礎編は,ナノ・マイクロスケール輸送現象の基礎を簡潔にまとめている.ナノ・マイクロスケールにおける問題解決には,境界領域的アプローチが不可欠である.そもそもなぜ熱物性値のサイズ効果が現れるのかを理解するためには,様々な横断的学問分野の基礎が必要である.例えば,量子力学,固体物理,統計力学,電磁気学などであるが,本ハンドブックの読者は必ずしもこれらの分野の基礎を習得していないことを前提としている.基礎編はすべてを網羅してはいないが,少なくとも他の専門的教科書を改めて読まなくても,その概要は理解できるような執筆を心掛けて頂いた.より深い理解のためには,各章の参考文献を参照されたい.従って,基礎編は横断的分野の大学院テキストとして使用することも可能である.ナノ・マイクロスケールの熱物性を数値データとして取得するためには,計測技術が必要であるが,試料サイズが微細なため従来の古典的計測技術は適用できない.そのために最近の約20年間で多くの新しい原理の測定法が開発されてきた.

B 計測・シミュレーション編は,これら最新の計測技術を集約してある.また,分子シミュレーションも「計算機による熱物性計測」と捉え,物理的実験では観測不能な現象の解明,あるいはナノスケールの熱物性値を数値として提供する手法の一つとして,その基礎と応用例がまとめられている. C データ編は,熱物性値(多くは熱伝導率)のサイズ効果を実際に利用されている物質について,公開されている文献データをまとめている.また,7章には産業技術総合研究所で開発された薄膜の熱拡散率標準物質とデータベースについてまとめられている.ただ一般的に利用されている物質では,ナノ・マイクロスケールにおいて,バルクな熱物性値のようないわゆる「推奨値や標準値」などの設定は本質的にできないため,そのサイズ依存性や文献値の一覧表示に留めている.

その理由は,ナノ・マイクロスケールの熱物性値がサイズもちろんだが,さらに製法や不純物などの様々な要因に大きく依存し,バルクの場合のように例えば単結晶や純度99.9999%のように単純に表示することでは不十分で,試料のキャラクタリゼーションがはるかに難しいからである.一方,研究開発の最前線では,例えばGaN薄膜のある温度における熱伝導率がある膜厚でバルクのおよそ何分の一になるのかが分かるだけでも,設計の役に立つはずである.このような読者は,A 基礎編でサイズ効果の基礎を理解した上で,C データ編の数値データ,グラフあるいは引用文献を眺め,自分の知りたいサンプルでは,どの程度バルクと異なるかを推定する必要がある.それが不十分であれば,B 計測・シミュレーション編の中から適切な計測法あるいはシミュレーション手法を利用して自分で(あるいは外部に依頼して)明らかにする必要がある.実に不親切と思われる読者も多いと思うが,これが手軽なハンドブック形式で現在提供(あるいは将来も)できる最善の方法だと考えている.少なくともこれまでは,データがとにかく欲しいという読者にとっては,全くの暗闇であったナノ・マイクロスケール熱物性の世界に,NM-TPHは進むべき方向を示す一筋の光明は提供できるのではないかと考えている.

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