説明
本書の前身、`蔬菜園芸ハンドブック’は、1963年刊行以来、広く教育・研究・技術普及等の関係者に利用されてきた。
1982年に至り、再三に及んで行われた部分的な改修・補・では、歳月の経過に伴う、品種・資材などの改良・開発に対応し得ないと考えられたので、抜本的な改訂を行うことになり、書名を`野菜園芸ハンドブック’と改め、新版が刊行された。
以後も本書は、数回にわたって記述内容の拡大・充実が行われたが、1987年には、各種統計数値や品種・資材機具などを、可及的野菜生産の現状に即したものに改める大改訂が行われ、別書ともいえる内容で、第4版が刊行された。
その後も本書は、重版の度毎に、可能な限りの改訂作業が加えられ、2000年には、第9版が刊行されるに至ったが、その時点で、名称を改めて以来二十年近くが経過し、生産現場における技術の内容も、大幅に進歩して、本書の記述内容にも、根本的な修正が必要と考えられるようになったので、新世紀に向け、大幅な改版を行うことになった。
出版に当たって、まずハンドブック出版の目的と性格については、品種・栽培技術の評価を正確に行うことで、流行的でない、`正統な技術’を確立し、その基礎となった科学的事実を、`偏りない正史’として普及することが、ハンドブックの使命であるとして、新版の内容については、この趣旨にそって項目の選定と執筆者の依頼を行い、総数110名に達することとなった。
野菜の生産・流通に対して、画期的な影響を及ぼした事例として、(1)関東大震災後に本格化した、鉄道等輸送機関の利用(1923年)、(2)第二次世界大戦後のプラスチック利用施設園芸の発展(1951年)、そして(3)20世紀の終局に始まった`電脳社会’の拡大などを挙げることができるが、その結果、1998年には、`農産物総産出額’に占める野菜の割合が26.3%に達し、同年の米(25.6%)、畜産物(24.4%)のそれを、有史以来初めて凌駕するにいたった(果実9.0%、花き4.1%)。これらの数字は、もとより生産物の優劣を示すものではないが、我が国農業生産の推移・変貌と、21世紀の将来像を、示唆するものということができる。
本ハンドブックは、野菜園芸の発展に寄与した技術の科学的根拠を、`品種・機械機器・施設’の発達を踏まえて明らかにし、他方、`土壌・肥料、病害虫防除、流通・販売’など部門の発展を含め、`偏りない正史’として紹介し、広く提供することを図ったものであって、生産者を始めとし、学生・研究者・生産関係技術者および普及・流通関係の方々に、活用されるはずである。
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