説明
意思決定上の適切な処方を得るためには、どのような方法論を用いることができるだろうか。農業経営や地域農業における様々な問題を対象として、この問いに対する答えを探求した結果できあがったのが本書である。意思決定問題は、農業経営の実践場面で重要な役割を果たし得るため、これまでにも様々な形で検討されている。本書では、意思決定上の評価基準が複数、利害関係者が複数である状況を明示的に扱うことを試みた。
この2点に注目した背景には、生産者や消費者の価値観の変化と多元化、さらには農業の担い手の多様化がある。近年その進展が著しい国際化、ボーダレス化の波は、この傾向に拍車をかけるものと思われる。現に、日本農業が直面している様々な問題は、食料、環境、人口の問題と密接な関連があり、これらの問題を解決していくためには、地域経済や一国の範囲を超えた国際的、地球的な視点、特定の分野を超えた総合的視点が必要とされている。また問題解決の場面に登場するのは、農業者、農業者団体、食品産業、消費者、国・地方公共団体等のそれぞれ様々な視点をもった利害関係者である。 このような状況で適切な処方を得ることを意図して、本書での探求には次のような特徴をもたせてある。
第1は、視野を国内のみに限定せず、国際的な視点から、分析手法を体系的かつ批判的に捉え直したことである。
第2は、現実場面を念頭におきつつ、理論的側面に配慮した上で、意思決定を分析するための様々な手法を検討したことである。
第3は、これまで公式には言及されることが少なかったコンフリクトのような現実の問題を、分析の俎上に載せたことである。
様々な分野の研究者、行政担当者、普及関係者をはじめとして、時代の先駆けとなるような取組に挑戦している農業者・農業団体職員の方々に多少とも有益な知見となるはずである。
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