説明
巻頭記事「柔軟切削工具を用いた硬脆材料の微細溝加工」
切削加工は幅広い加工スケールに対応でき、高能率かつ高精度な除去加工として普及している。
加工精度を極限まで追求するために加工機械、駆動制御機構、工具など、さまざまなアプローチでマイクロ・ナノメータスケールの切込み制御技術の研究がおこなわれている。
なかでも原子間力顕微鏡(AFM: Atomic Force Microscope)機構を利用したナノスケール切削では、一般的な送り量を基準とした切込み制御に替えて、切れ刃に作用する垂直荷重を制御することで、ナノメータスケールの切込みで切削加工をおこなうことができる。
硬脆材料である単結晶シリコンを被削材として、数十ナノメートルの切込み深さで、割れや欠けをともなわない延性モード切削をおこなうことができる。
しかしながら、AFM機構では加工領域が最大でも100 µm四方の領域に限定され、また100 nmを超える切込み深さを付与することは不可能であった。
そこで本研究では、このAFMの荷重制御メカニズムをベースに、柔軟なカンチレバー型工具を用いて深さ1~10 µmの単一溝切削加工をおこなう切削加工システムを構築した。
切削加工では、一般に高剛性な工具ホルダが要求されるのに対し、容易に変形する柔軟なカンチレバー型の工具ホルダを用い、変位センサでそのたわみを測定、圧電素子を用いた微動機構によりたわみ量を一定にフィードバック制御することで切込み量を一定に制御する。
この工具ホルダを一般の工作機械と同様の直交三軸ステージ駆動機構に搭載することで、AFM機構と比べて実用に近いスケールの切削加工をおこなうことができる。
(産業技術総合研究所 製造技術研究部門 総括研究主幹)芦田 極
(千葉大学大学院 工学研究科 教授)森田 昇
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