日本農学会は、農学に関する専門学会の連合協力により、農学およびその技術の進歩発達に貢献することを目指し、
広義の農学系分野の学協会連合体として、昭和4年(1929)に設立され、まもなく80周年を迎えようとして
います。ところで、地球環境および資源の有限性が明白になった21世紀においては、資源循環型社会の創造は全
人類的課題でありますが、それは日本農学会の目指す農学の課題でもあります。農学というと、一般に農業に直接
関係する学問のみを意味すると誤解されがちですが、それは狭義の農学です。日本農学会の対象とする農学とは、
狭義の農学、林学、水産学、獣医学等はもとより、広く生物生産、生物環境、バイオテクノロジー等にかかわる基
礎から応用にいたる広範な学問全般を含んでいます。すなわち、日本農学会は、農学が人類の生存と発展に貢献す
ることを究極の目標に、自然科学と社会科学の基礎から応用までの幅広い分野を包含する総合科学としての農学の
発展と普及を指命とする学会です。 さて、日本農学会では、日本の農学が当面する課題をテーマに掲げ、それに精通した専門家に講演を依頼し、若手
研究者や農学に関心をもつ一般の方々を対象としたシンポジウムを平成17年度から毎年10月に開催してまいり
ました。今回のテーマは、「外来生物のリスク管理と有効利用」であります。明治元年以降、人間の移動や貿易が
盛んになるにつれ、新たな外来生物の導入や侵入が増加しています。それに伴い、これら外来生物が日本固有の生
態系や環境に影響を及ぼし、人の生命・身体、農林水産業に被害を与える可能性が指摘されています。このような
状況を受けて、平成17年6月から「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」が施行され、
指定された生物はその飼養、栽培、保管、運搬、輸入が禁止されることとなりました。 一方、米・野菜などの主要な農作物や牧草・園芸植物、乳牛・鶏・豚などの家畜、蜜蜂、養殖魚やペットなど、食
糧としてだけでなく私たちの生活には欠かせない有益な生物の多くも、必ずしも日本固有の生物ではなく、その多
くは世界各地からやって来た外来生物です。そのため、今後も新たな有用生物の導入や開発が農学研究上きわめて
重要であると考えられます。 そこで、本シンポジウムでは、講師の方々にそれぞれの立場から、外来生物のもつリスクと有効利用に関する最近
の研究を紹介するとともに、外来生物のリスク防止に関する行政上の理念の紹介を通じて、その問題点を明らかに
していただきました。 本書は、講師の方々にその講演の要点をできるだけ平易にまとめていただいたものであります。本書の刊行によっ
て、これらの問題に対する社会の理解が一段と深まることを期待いたしております。 |