高温障害に強いイネ
 
 
 
日本作物学会北陸支部 北陸育種談話会 編
 
 

■定価 2,520円 (本体価格 2,400円)
■A5判 147頁
■送料 290円
■発行年月  2007.09
■ISBN 978-4-8425-0424-7

 
 
■概略

登熟期の高温によって白未熟粒や胴割粒が、生じにくいとされてきたコシヒカリなどの品種や地域の主力中生品種、普通期作などでも頻繁しており、地域・規模ともに過去を上回っている。高温年を中心とした品質低下は、登熟期の高温が直接的引き金ではあるが、背景には温度条件だけではない 様々な要因が複合的に作用していると考えられる。高温障害には、その原因が生理的なものか、構造的なものか、さらに籾の構成要素によるものか、がわかれば高温回避も何らかの方法によってできるであろう。また冷害回避も将来解決の途が拓かれるものと考える。本書は、高温障害の基礎的な研究と同時に実際の栽培回避策を模索する内容で関係者にすすめる。

 
 
■解説

登熟時の高温による玄米外観品質低下が広い地域で問題となっている。品質低下は白未熟粒や胴割粒などの不完全粒が増えることによるものであり、検査等級が格下げされる。コメの産地間競争が激化する現在、この問題への早急な対応が求められている。
  登熟期の高温によって白未熟粒や胴割粒が増えることは以前から知られていた。東北地方の高温感受性が高いとされるササニシキ、登熟初期が梅雨明けの盛夏に重なる関東・東海の早場米や北陸の早生品種、登熟後半ほど気温が高くなる暖地の早期水稲などでの白未熟粒発生、フェーン現象の生じやすい日本海沿岸や関東内陸部などでの胴割粒発生、これらは各地域で問題とされていた。しかし近年の被害粒発生、とくに白未熟粒は、生じにくいとされてきたコシヒカリなどの品種や地域の主力中生品種、普通期作などでも頻発しており、地域・規模ともに過去を上回っている。おりしも「地球温暖化」が取りざたされており、地球規模の温度上昇が基盤にあるのではないかとの指摘もある。確かに、高温年を中心とした品質低下は、登熟期の高温がその直接的引き金であろうが、実は背景には単純な温度条件だけではない様々な要因が複合的に作用していると考えられる。北陸地域を例に、被害発生に関わると推定される要因を含めてその背景を概観し、当面の技術的対策の方向を考察する。(1章より抜粋)

 
 
■要目

[主要目次]
1. 緒言
1.1 はじめに
1.2 高温登熟被害の発生要因((1)登熟期気温の上昇:(2)出穂期の前進と盛夏との重なり:(3)分げつ期高温による籾数過剰:(4)少肥化傾向による登熟期の窒素栄養不足:(5)地力低下や作土層浅耕化など土壌管理の影響:(6)登熟期の早期落水傾向:(7)作付品種、経営規模など営農的要因:(8)圃場の気象・用水環境の変化)
1.3 北陸地域で実施中の技術対策((1)移植時期の遅延:(2)適正籾数への制御・誘導:(3)疎植栽培:(4)肥効調節型肥料の利用:(5)早期落水の防止:(6)地力向上と作土層確保による根系生育促進:(7)高温登熟性の高い品種導入(早生):(8)作期分散や圃場地力の均一化、圃場環境・用水環境の改善)
2. 高温障害の生理・生態
2.1 高温耐性品種育成における育種の現状と課題((1)はじめに:(2)北陸地域における高温耐性育種:(3)高温耐性の遺伝と育種方法:(4)高温耐性品種育成に向けた今後のアプローチ)
2.2 登熟期の高温が子房の転流・転送系およびアミロプラストの構造におよぼす影響((1)子房における光合成産物の転流・転送経路:(2)登熟期の高温が子房の転流・転送系へおよぼす影響:(3)登熟期の高温がアミロプラストの構造および玄米の粒厚におよぼす影響:(4)登熟期の高温による玄米中の白色不透明部の発生:(5)登熟期のフェーン現象による玄米への影響:(6)まとめ)
2.3 高温が幼穂形成期以降の生殖生長におよぼす影響((1)不稔の発生について:(2)登熟期の障害について)
2.4 登熟期の高温による白未熟粒発生と粒重低下―高温の範囲と遭遇時期との関係―((1)はじめに:(2)白未熟粒の種類とその白濁部位の生成:(3)登熟期の高温による白未熟粒の発生:(4)登熟期の高温による粒重増加経過と粒重・粒径の変化:(5)おわりに)
2.5 籾への炭水化物供給から見た高温登熟性に優れるイネ((1)はじめに:(2)乳白粒発生要因:(3)高温登熟環境で登熟性のよいイネとは)
2.6 高温による白未熟粒の発生と登熟期間の葉色の影響((1)近年の高温化と田植え時期繰り下げの効果:(2)白未熟粒の発生要因:(3)栽植密度が基白粒、背白粒発生におよぼす影響:(4)基白粒、背白粒の発生を軽減するための適正葉色推移:(5)まとめ)
2.7 高温登熟と根の広がり((1)はじめに:(2)下層への根の広がりと環境:(3)コシヒカリの根重と地上部重の推移:(4)根の生育パターンと品質への影響:(5)栽培条件と根系、収量、品質:(6)最後に)
2.8 胴割れ米の発生と高温登熟((1)はじめに:(2)胴割れの判定基準:(3)なぜ米粒に亀裂が生じるか:(4)登熟初期の気温と胴割れとの関係:(5)高温登熟条件下の胴割れ発生軽減にむけた育種・栽培的対策)
2.9 水稲の高温登熟障害発生要因と対策技術開発の現状((1)はじめに:(2)白未熟粒発生状況:(3)生理メカニズム:(4)栽培対策:(5)窒素施肥法の改善:(6)今後の課題)
2.10 高温登熟と食味

3. こしいぶき
3.1 開発の背景と経緯
3.2 育成経過
3.3 品種特性の概要
3.4 「こしいぶき」の育成に適用した新しい選抜法((1)高温登熟性の検定:(2)育種初期段階での良食味選抜:(3)新しい選抜方法の効果)
3.5 高品質・極良食味米生産のための収量および収量構成要素と生育指標・品質目標と収量および収量構成要素
3.6 高品質・極良食味米生産のための重点栽培技術((1)健苗の育成:(2)基肥、移植時期、栽植密度:(3)溝切り・中干しによる生育調節:(4)生育診断と穂肥:(5)水管理:(6)病害虫防除:(7)適期収穫:(8)整粒歩合の高い1等米への乾燥・調製)
3.7 現地適応性と市場評価((1)現地適応性(現地事例):(2)市場評価

4. てんたかく
4.1 背景
4.2 育成経過
4.3 品種特性の概要((1)草型:(2)早晩生(出穂期・成熟期):(3)収量性および玄米品質:(4)食味および食味関連形質:(5)耐病性、障害抵抗性)
4.4 高温登熟および日照不足に対する耐性((1)高昼温における登熟性検定:(2)高夜温における登熟性検定:(3)低日射量下での登熟性検定)
まとめ

索引