根のデザイン
 
 
 
東京大学教授:森田茂紀編
 
 
■定価 3,570円本体価格 3,400円)
■A5判 208頁
■送料 310円
■発行年月 2003年11月
■ISBN 4-8425-0353-x
 
 
■概略
「根」の形態と機能を制御する技術を解説し、食糧生産と環境形成問題に根系の重要性を説く。
 
 
■解説
 本書のタイトルに採用した「根のデザイン」というのは、第5部第21章で紹介されている小島雅通氏(サヘルの森)・大沼洋康氏(国際耕種株式会社)・坂場光雄氏(株式会社エコプラン)のグループによる、乾燥地における植林活動のキャッチフレーズである。彼らは、厳しい乾燥条件の中で生き残っている植物の根をお手本にして、根をデザインすることによって失われた緑を少しずつ回復させ、それを基盤に現地の生活を再構築する実践活動を続けている。自然生態系に学び、これを利用しようという姿勢には学ぶべき点が多い。
「根のデザイン」という考え方には、1.根系の形態や機能を制御する技術、2.達成目標としての理想型根系、3.根系の形態や機能を評価するためのノウハウ、という3つのポイントがあると編者は考えている。根について概説したうえで、このような考え方を提示したのが第1章である。また、第2章は、長年にわたって理想型根系という考え方を主張してきた山内章氏の解説である。これら2つの章からなる第1部では、本書の核となる概念を提示しながら、1.のポイントである理想型根系について考察した。第2部では3.のポイントを取り上げ、根系の形態や機能を測定・評価するための方法を整理してある。これは、理想型根系がどのようなものであるかを検討しながら、その目標に向かって根系を制御していくために必須のポイントである。第3部・第4部・第5部では、1.のポイントに関連した研究成果や応用事例を紹介した。すなわち、第3部では、根系の形態や機能を遺伝的に制御するための基礎研究や、実際の育種との係りについて整理した。また、第4部では、食糧生産の場面において根系の形態や機能を栽培的に制御する方法を、作物別に解説した。さらに、第5部においては食糧生産および人間生活の基盤となる、広い意味での環境形成のために根系を制御する技術が、生態系や目的別に紹介されている。
以上のように、「根のデザイン」の基盤となる3つのポイントについては多くの試みが行われているが、今後の研究や実践に待つところが少なくない。本書が提示する「根のデザイン」という視点が、今後の根の研究の発展とその利用に少しでも役立つことを願っている。(序文抜粋
 
 
■要目
第1部根のデザインと理想型根系
第1章根のデザインとは(1.食糧・環境問題と植物の根、2.植物の根が果たしている役割、3.根系の形態と機能の制御技術、4.達成目標としての理想型根系、5.植物根系の機能と今後の課題)、第2章理想型根系とは(1.根系の機能と構造、2.理想型根系へのアプローチ、3.理想型根系の今後)
第2部根系の形態と機能の評価
第3章根系形態の測定と評価(1.根系調査の考え方、2.根系形態のパラメータ、3.根系形態の調査法、4.根系形態の調査法の特徴とパラメータ)、第4章水分吸収の測定と評価(1.重量法による蒸散量の測定、2.同化箱法による蒸散量の測定、3.土壌水分の変化による吸水量の推定、4.ポトメータを利用した吸水量と蒸散量の測定、5.茎内流速度の測定)、第5章養分吸収の測定と評価(1.植物にとっての養分、2.養分吸収量の測定と評価、3.吸収活性の測定と評価)、第6章生理活性の測定と評価(1.根の生理活性の指標、2.出液速度、3.生体電位)、第7章支持機能の測定と評価(1.水稲の耐倒伏性と根の生育特性、2.水稲の押し倒し抵抗値の測定、3.水稲苗の冠根直径の計測と評価)
第3部根系形成の遺伝的な制御
第8章遺伝的変異と環境変異(1.イネの根系形態における遺伝的変異、2.コムギの根系形態における品種間差異、3.根系生育に及ぼす環境変異)、第9章根の発育遺伝学(1.根系形成における根の伸長性、2.シロイヌナズナの胚発生と幼根形成、3.幼根の形態と生育に関する突然変異体、4.細胞の伸長と根の伸長、5.植物ホルモンと細胞分裂・細胞伸長)、第10章根系の遺伝的改良(1.モデル植物の突然変異体の解析、2.毛状根を利用した根系の改良)、第11章根型育種と栽培管理(1.根の遺伝的改良の必要性、2.熱帯陸稲の耐乾性改良と根形質、3.土壌・栽培環境要因の影響、4.茎葉部の形態との関係、5.陸稲の根改良の方向、6.低栄養投入適応品種の育成、7.根形質の遺伝的差異の利用)
第4部食糧生産と根系制御
第12章水稲の栽培と根系(1.施肥の様式と根系の生育、2.肥料の種類と根系の生育、3.長期連続施肥と根系の生育、4.根の生理的活性の評価、5.根系の生育と収量)、第13章陸稲の栽培と根系(1.陸稲栽培における障害、2.耐乾性と根系)、第14章コムギの栽培と根系(1.根系の構造と発達、2.土壌環境による根系の変化、3.根系形態の遺伝的改良)、第15章畑作物の栽培と根系(1.不耕起栽培による根系の変化、2.不耕起栽培における深根化の試み、3.栽培管理と根系形成、4.根菜類の根系と育種)、第16章野菜の栽培と根系(1.セル成型苗の根系、2.施肥管理と根系の生育、3.養液栽培と理想型根系、4.点滴灌漑栽培と根系)、第17章永年生作物の栽培と根系(1.果樹の栽培と根系、2.チャの栽培と根系、3.コーヒーの栽培と根系)
第5部環境形成と根系制御
第18章作付体系と根系の生育(1.作付体系と根系の生育、2.汎用化水田における地力増進作物、3.輪作における作物の生育と根系、4.混作・間作における作物の生育と根系)、第19章根系と根圏環境(1.植物による土壌資源の獲得、2.根による根圏pHの調節、3.機能性根分泌物と菌根共生系、4.不均一な養分分布に対する根系の応答)、第20章ファイトレメディエーション(1.ファイトレメディエーションとは、2.ファイトレメディエーションにおける植物根の役割、3.ファイトレメディエーションのメカニズム、4.ファイトレメディエーションの今後の展望)、第21章沙漠緑化と根系の生育(1.乾燥地に生きる植物の智恵、2.「根のデザイン」の考え方、3.長根苗の育成方法、4.小径パイプを使った簡易掘削法による植栽、5.長根苗栽培のメリット、6.「根のデザイン」の今後)、第22章都市緑化と根系の生育(1.都市化と都市緑化、2.都市緑化と植物の根、3.特殊土壌地における都市緑化